12440 アメリカ上院議員の日本核武装論  古森義久

アメリカ上院のボブ・コーカー議員の中国批判論文の紹介を続けます。今回分でこの主題は終わりです。
コーカー議員は中国こそ北朝鮮の軍事冒険主義を抑えられるのに、その努力をしていないと批判するわけです。その批判の過程で同議員は日本の核武装の可能性についても語りました。
<<北朝鮮の軍事挑発を許す中国の責任 米国議員が警告、このままでは日本も含めた核武装競争に>>
コーカー議員は、日本の憲法改正への動きも、そうした北朝鮮の脅威の増大と米国の核抑止への信頼の縮小を動機とする部分が多いのだと指摘する。韓国内部では自前の核武装を求める意見が強くなっており、韓国が核保有へと走ると、日本もその方向への歩みを速めるかもしれない、というのだ。
同議員はさらに論文で、オバマ政権の高官たちは「中国は最近、北朝鮮への態度を硬化させ、核武装阻止のための経済制裁強化などに賛成するようになった」という見解を語るが、実際にその証拠はなく、中国から北朝鮮への燃料や食料は相変わらず分量を変えることなく流入を続けている、と強調する。
中国の李克強首相は米国に対し、北朝鮮を挑発するような行動を一切取らないよう求めたという。挑発は北朝鮮ではなく米国による、という前提のようなのだ。
■日本の核武装が中国への圧力の武器となる
そしてコーカー議員は次のような諸点を強調するのだった。
「中国のいまの態度は許容できない。北朝鮮が脅威である限り、米国は中国のすぐ周辺の軍事プレゼンスを今後増強する。米国はまた日本と韓国の防御、攻撃の両面での軍事能力の強化を激励する。東アジアでの韓国や日本をも含めての核武装競争はもはや単なる仮定ではなく、現実性を帯びてきた」
「米国政府は北朝鮮の非核化という従来の目標を追求する限り、中国への態度を厳しくし、まず北朝鮮と取引のある金融機関への米国独自の制裁を大幅に強めるべきである。朝鮮半島の将来について中国は米国と真剣な対策を取らねばならない時期がきた。現状維持という選択肢はもうあり得ない」
コーカー議員はこうした強い対応を提唱するのだった。
このままだと日本が核武装へ進むかもしれないという予測は、年来の日本の核アレルギーを考えれば、非現実的に響く。しかし米国の有力議員が日本の核武装を予測し、さらにその核武装を中国への圧力の武器とする戦略を提示するのだ。
コーカー議員はその前提として、日本を覆う米国の「核のカサ」が効用をなくしていくという可能性をも指摘する。こうした言辞は、日米同盟の現実や、米側の対日政策のどこか根底で新たな変化の潮流が流れ始めたことの予兆とも受け取れるのである。(終わり)
杜父魚文庫

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