H7N9(鳥インフル)の脅威はペンデミック(世界的伝染病)になる危険性。いやまして河南省の未曾有の「エイズ禍」はどうなっているのか。
河南省のエイズ禍の実態は、過去何回か勇気ある医師、ジャーナリストの活躍で報じられてきたものの、本当の実態を探ろうとすれば、中国が厳格な報道管制を敷き、その上に悪名とどろく「エイズ村」への出入りを厳重に禁止し、監視しているため取材が不可能である。
2009年に河南省のエイズ禍の実態を暴いた女医、高耀潔女史は米国へ亡命後、『血災 10000対信』を著して世界に衝撃を与えた。
河南省では1990年代に「売血」が奨励され、その注射針を使い回ししたことが原因となってまたたくまにエイズが蔓延した。罹患者は60万人以上と言われる。
しかし潜伏期間が平均五年だったことも手伝って原因が行政のミスであることは断定できず、まして河南省の衛生当局は奇病の流行をひた隠しに隠した。
日本人ジャーナリスでは福島香織女史が、中国人作家に化けて、かのエイズ村へ潜り込んでエイズ被患者へのインタビューに成功した数少ない例である(『中国の女』、文藝春秋)
最近、河南省社会科学院研究員の劉清が出版した『血傷』という本が評判をとっているが、中国国内では発禁処分のため、肝心の河南省で知る人は殆どいない。(血傷の「傷」はかばね編、劉清の「清」はにんべん)
この本を書いた劉清女史はエイズ患者が多い病院で長く同室者として取材を続行した。
相当数の患者から実態の聞き取り調査をやり遂げた。貧困の農家で売血が奨励された実態、血を売らざるを得なかった農村の貧困の状況を六年かけて調査した記録であり、伝染から、症状、その死亡率や直接原因なども統計を取っている。
▼あのエイズ流行ピークの時の河南省のトップは誰だ
或る2000人の村では売血による感染で400数十名がエイズと判明し、2007年までに死亡した村人が245人、その村人の氏名も証拠として記録された
香港の『文准報』は、2002年8月13日号ではやくも、この問題を報道している。
当時、河南省商丘双廟の村人3000人のうち、301人がエイズを罹患しており、すでに123人が死亡したことを伝えた。
「一銭のカネもなく、看病するひともおらず、薬がなく、ただ死を持っている状態だ」と、この時点からすでに惨状は当局によって把握されていた。
しかし河南省政府は何も対策をとらず、エイズの実態をばらして者を『社会騒乱罪」で逮捕・拘束する有様だった。
そのエイズ災禍のピーク時の河南省書記は、李長春(後の政治局常務委員、江沢民派)、その後継が李克強(現国務院総理)だったことは広く知られる。
こうして河南省のエイズは「世界公共衛生異常空前の重大災禍事件である」(香港誌『開放』、13年五月号)
杜父魚文庫
12577 未曾有の中国・河南省のエイズ村 宮崎正弘

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