アメリカ国防総省の北朝鮮軍事力報告の最後です。北朝鮮が日本をもいざというときの軍事攻撃の標的とみていることは確実だというのです。
では日本はその「いますぐ、そこにある危機」に対する防御策があるのか。軍事的にはゼロだといえます。
<<今こそミサイル防衛の真剣な見直しを 米国防総省が明記した北朝鮮の日本への脅威>>
・北朝鮮は2009年7月に日本海に向けて合計7発のスカッドミサイルを発射して、日本をも攻撃できることを誇示した。
以上のように北朝鮮が日本を少なくとも潜在的な敵だと位置づけていることは明白なのである。米国の国防総省がそう認定しているのだ。しかも北朝鮮が日本をいざ攻撃する、あるいは攻撃するぞと威嚇する、その最大の手段は弾道ミサイルであることも明白だと言える。
■北朝鮮のミサイルに対する抑止力を持たない日本
その弾道ミサイルは移動可能な発射台が多くなっているとはいえ、米軍の偵察能力により日ごろの所在位置は判明している。
しかも最近の人工衛星の機 能向上により、実際に発射の準備が始まれば、その探知はさほど難しくはない。つまり日本への弾道ミサイル発射の準備が開始されれば、即座に探知できる能力は日米同盟側にはあるということである。つまり日本も察知できるわけだ。
しかし日本側にはミサイル防衛網があるとはいえ、もちろん盤石という状態からはほど遠い。
攻撃は最大の防御とよく言われるが、北朝鮮のミサイルが稼働され、日本に向けて発射される直前に破壊ができれば、日本の防衛という観点からは理想である。日本側がいざという場合には北朝鮮のミサイルを破壊できる能力を保持することが北朝鮮に知られていれば、北は実際のミサイル発射を抑制してしまうこともあり得る。
だがいまの日本にはその目的のための抑止力の手段は何もないのである。北朝鮮の弾道ミサイルを破壊できるミサイルも、爆撃機も、日本は保有していない。保有を許されてもいない。その理由をさかのぼれば、結局は現行憲法による制約ということになろう。
米国の国防総省報告が明らかにした北朝鮮の日本に対する軍事脅威は、期せずして日本固有のそんな課題をも提起したのである。(終わり)
杜父魚文庫
12604 北朝鮮への抑止力ゼロの日本 古森義久

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