北朝鮮がミサイルを発射する構えを示して、「ワシントンを火の海とする」「核ミサイルを撃ち込む」「東京も例外ではない」と、連日これでもかこれでもかと、戦争熱を煽り立てている。
北朝鮮の芝居の振付け師は、中国だ。
ピョンヤンのテレビ放送の画像を見ていると、金正恩お坊ちゃまが黒い外套を着て、アイロンがよくかかった軍服に、胸に略章をつけた将軍たちに囲まれて、双眼鏡を覗いて指示を与えている。双眼鏡で、ワシントンや、東京を覗いているつもりなのだろうか。
映像は兵隊ゴッコを、連想させる。まるで学芸会の演し物だ。中国が背後に控えているから、安心しきっている。戦争に突入しようとしているのなら、戦闘服を着るはずだ。
ところが、ワシントンは正恩お坊ちゃまの下手な芝居を真面目に受け取った。
アメリカのケリー国務長官が北京へ走っていって、習近平国家主席と会見して、北朝鮮を宥めてくれるように懇願した。
このところ、中国は日本だけではなく、東南アジア諸国を脅かしたために、米中関係が緊張した。そこで、米中関係を修復しようとして、北朝鮮をけしかけた。中国が仕掛けた罠に、アメリカが落ちた。悪巧みが成功したということだった。
アメリカは財政を再建するために、向う10年間で連邦支出を1兆1千億ドル(約110兆円)を削減しなければならない。その半分が国防費である。アメリカはもはや中東とアジアで、同時に戦う能力がないために、すっかり腰が引けている。
だから、アメリカは日本が中国を刺激して、日中が尖閣諸島をめぐって、武力衝突を招くことを、恐れている。
アメリカは北朝鮮が悪ふざけしたのに対して、強硬な姿勢を崩さずに、習主席に中国が北朝鮮を説得しないかぎり、北朝鮮のミサイルや、核施設に限定した攻撃を加えざるをえないと、伝えるべきだった。
北朝鮮に外科的な攻撃を加えたとしても、中国が北を援けてアメリカと戦うことは、考えられない。習体制は北朝鮮がアメリカによって罰せられるあいだ手を拱いていたら、面子を失って、体制が揺らぐことになるから、北朝鮮を抑えることになったろう。
アメリカは経済的な快楽を求めて、貧しく無力だった中国から、世界第2位の経済力を持つ妖怪をつくりだした。アメリカは中国の経済力にいまだに魅せられているから、中国と対決したくないから、腰が定まらない。中国を友としたいが、敵のようにも思える。
そのために、米語に中国を指してfrenemyという新語がつくられて、さかんに使われるようになっている。友「フレンド」と、敵「エネミー」の合成語である。
ケリー国務長官は中国に好意をいだいているが、東ヨーロッパのアシュケネジ(ユダヤ人)の血をひいており、母方は中国貿易によって大儲けした。日本を対米戦争の罠にはめたルーズベルト大統領の母方の祖父が、中国との阿片貿易で巨富をなしたことから、中国贔屓だったのを思わせる。
オバマ政権は1期目のなかばから、中国と対抗するために、2020年までにアメリカの海軍力の60パーセントをアジア太平洋に集中することを決定し、「アシアン・ピボット」(アジアへ軸足を移す)戦略と呼んだものの、中国を刺激しないように「リバランス」と言い替えるようになっている。
中国も北朝鮮と同じように体制が行き詰まって、戦争熱を煽って、北朝鮮化している。
オバマ政権は安倍政権が「強い日本」を志向していることに賛成しているが、慰安婦についての河野官房長官談話、日本が先の大戦に当たってアジアを侵略したという村山首相談話を否定することには、中国、韓国の怒りを招くことになるから、まったく望んでいない。アメリカの国内世論からも、強い反発を招いて、政権を窮地に立たせることになる。
慰安婦であれ、先の大戦中に侵略を働いたというのであれ、南京事件であれ、事実無根であるが、一国の政府がまったく虚偽の事実を公的に認めるような奇想天外なことは、民主主義国ではありえないことだ。全世界が事実だと信じ込んでいるのも、当然のことである。
それだけに、河野、村山談話の罪は重い。日本が国家の安全を守るのに当たって、日本の汚名を清(そ)ぐことを、急がねばならない。
日本の名誉を回復することが、日本の価値を高めることになり、ひいては日本外交に力を与えることになる。
政府としては広報予算を大胆に投入して、海外で通用する民間の識者を動員して、正しい歴史的事実をひろめなければならない。対米、対中外交を建て直す第一歩となる。
杜父魚文庫
12647 河野、村山談話の罪重い 加瀬英明

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