常識的には衆参ダブル選挙はないとみるのが妥当だが、自民党内には昨年の衆院選に関し「1票の格差」の無効判決が下されたことから1年以内に衆院選を実施する大義名分はあるとして、ダブル選の可能性がくすぶっている。
そこにもってきて飯島内閣官房参与が訪朝して、姜錫柱副総理らとの会談が実現すれば、停滞していた拉致問題が前進する可能性が出てきた。選挙前に安倍首相が訪朝するとみるのは時期尚早だが、拉致問題が前進する兆しがみえれば安倍政権にとって大きな得点になるのは間違いない。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは「飯島氏の訪朝で”8月衆参ダブル選”浮上」と早々と観測気球をあげた。ダブル選となった場合には「民主党が壊滅状態になる」とみられることから、野党側も飯島訪朝に神経をとがらせている。
<内閣官房参与の訪朝で、安倍晋三内閣の北朝鮮問題への取り組みに関心が強まっている。今後の状況次第だが、拉致問題の打開のタイミングをにらみ、7月に予定される参院選までに間に合わなければ8月実施も視野に入れ、衆院と同日(ダブル)選に打って出る可能性が一部で指摘される。
ダブル選挙で与党大勝なら憲法改正も着手しやすい環境に飯島氏はきのう午後、空路平壌空港に到着。今回政権の当局者として初の訪朝となる。日本の政府関係者は訪朝日程や目的を明らかにしていないが、小泉純一郎元首相の訪朝を手がけた実績から、拉致問題の事態打開に向けた動きとみられている。
安倍内閣の昨年12月発足に伴い官邸入りした飯島氏を2月に取材した際、安倍内閣からのミッションは「参院選に勝つこと」と述べていた。
安倍首相は就任後、拉致問題を在任中に解決すると強い決意を示しており、閣内でも古屋圭司拉致問題担当相が北朝鮮と国交のあるモンゴルへの早期訪問を模索している。「北朝鮮カード」は政局の重大局面まで温存したい切り札だろう。足元で「アベノミクス」を手掛かりに円安が進み、日経平均株価は4年超ぶりの1万5000円台まで回復。与党圧勝が確実視される参院選で、その切り札を切るだろうか。
7月28日に任期が切れる参院の改選121議席は、現時点で7月21日投開票が見込まれている。ただ公職選挙法の規定により、最長で8月27日まで延期もできる。参院選が8月にずれ込んだ例は過去にないが、急転直下で拉致問題が解決に向かえば、ダブル選も「ありえないとは言えない」とある自民党関係者はみている。参院選の投開票日は過去3回、6月中旬ごろに閣議決定されている。
同日選は常識的に、衆参で与党大勝が予想される際に実施する。衆院選は昨年12月に実施したばかりで、またすぐに選挙ということなれば費用面からみても非現実的だろう。ただ、昨年の衆院選に関し「1票の格差」の無効判決が下されたことから1年以内に衆院選を実施する大義名分はある。
ダブル選となった場合には「民主党が壊滅状態になる」と自民党筋はみている。連立相手ではあるがこの問題に慎重姿勢な公明党の発言力を弱めたい意向もあるだろう。自公は選挙で協力関係にあるが、同自民党関係者は「政権にとどまりたい公明党は改憲論議で自民党に同調せざるを得ないのではないか」と踏んでいる。
4月17日掲載のJRT「それでもくすぶる衆参ダブル選挙の思惑」で、現実には考えにくいものの、1票の格差を背景に安倍内閣の高支持率や民主党の低迷により7月に衆参同日選挙が実施されるとの見方が与野党関係者にくすぶっている、と指摘した。衆参ダブル選挙で与党大勝なら、安倍首相が政権発足当初から目指す憲法改正に着手しやすい環境になる。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫
12668 飯島訪朝で”8月衆参ダブル選”浮上 古澤襄

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