12669 プーチン政権下 台頭する武闘派  古澤襄

<【モスクワ=遠藤良介】発足から1年余りが過ぎた通算3期目のプーチン・ロシア政権では、治安・特務機関の幹部や出身者などシロビキ(武闘派)の影響力が増している。
今月8日には、かつて「灰色の枢機卿」と呼ばれ、後にリベラル派に傾斜したスルコフ副首相が解任された。米外交官がスパイとして拘束された事件も、欧米諸国や反政権派への強硬路線を主唱するシロビキの台頭を反映していよう。
2000年に1期目の大統領に就任したプーチン氏は、指導部の要所にシロビキとリベラル派を配し、バランスを考慮した政権運営を試みた。その重心は徐々にシロビキに傾いたものの、08年にはリベラル派のメドベージェフ現首相を中継ぎの大統領に据え、改革への意欲を見せもした。
だが、プーチン氏の大統領復帰後は両派のバランスが大きく崩れ、シロビキ主導が鮮明になった。旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身のイワノフ大統領府長官や国営石油「ロスネフチ」のセチン社長、連邦捜査委員会(SK)のバストルイキン委員長といったシロビキの存在感が高まる一方、メドベージェフ首相の権威は完全に失墜した。

本人の辞意に基づくスルコフ氏解任の根底にも、同氏と強硬派の路線対立があったと考えられている。
広告業界出身のスルコフ氏はプーチン氏の前回大統領期に大統領府副長官を務め、ロシアには独自の民主主義があるとする「主権民主主義」の概念を打ち出すなどクレムリンの理論家として知られた。ただ、メドベージェフ前大統領期にはリベラル寄りの姿勢を見せ、11年末には大規模デモの責任を取る形で内閣に転出した経緯がある。
「スルコフは(反対派を)投獄するよりも(民主主義の体裁を取り繕う)政治的術策や欺瞞(ぎまん)の方が効果的と考えていた」。反政権派のネムツォフ元第1副首相はインタファクス通信にこう語り、スルコフ氏解任は、政権がシロビキ流の“力業”に走っていることの表れだと述べた。
プーチン政権はこの1年間、反政権派や市民団体を萎縮させる新法を相次いで制定し、反プーチンの有力ブロガー、ナワリヌイ弁護士は横領容疑などで起訴された。政権は、欧米が反政権派に資金援助しているといった排外的主張も強めており、主要テレビ局は米外交官の拘束事件を大々的に報じている。(産経)>
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