中国の軍拡と日米同盟の将来についての報告です。日米同盟はこのままだと効力を失っていく、という趣旨です。このエントリーはこれで終わりです。
・当事国すべてにとって、安全保障の新しい関係を構築するまでの政治、軍事の交渉の期間に生じる不安定や挫折への懸念が生じる。
しかし報告は以上のような障害にもかかわらず、米国も日本も新たな政策を真剣に検討せねばならない、と強調していた。なぜならば、現状維持は好ましくないからだというのである。
おそらくこの点がこの膨大な報告全体でも、最も重要なポイントだと言えるかもしれない。日本にとっても、米国にとっても、さらには日米同盟にとっても、現在の東アジアでの安全保障の状態は現状維持を許さない、というのだ。
その点を、報告は以下のような表現で総括していた。
「現状維持は保持不可能だということが確実に証明されるだろう。米国も日本も、たとえ政治的な障害が予期されようとも、本報告が提案した政治、軍事の新政策の採択を真剣に考えてみなければならない。
中国、日本、米国の関係についての現在の経済的、軍事的な傾向は、現行の政策や戦略では長期的に見て、日米両国の利益に合致する安定した安全保障環境を保てないという展望を示しているのだ」
要するに日本も米国も、中国の膨張する軍事パワーに対してかなり画期的な対抗策を取らなければ、日本を取り囲む東アジアの安全保障構図は大きく揺らぎ、中国が有利な方向へと大きく傾いていく、という勧告なのである。
だからこの報告は、日本の安倍政権、そして米国のオバマ政権の両方に大きな政策提言をしたのである。その提言は「現状維持こそ危険だ」とする警告でもあった。(終わり)
杜父魚文庫
12843 日米同盟がほころびていく 古森義久

コメント