12866 私の背中を目がけて弾を撃つ奴がいた 西村眞悟

本日六月一日は、神戸市東灘区魚崎浜に所在する海上自衛隊の阪神基地隊開隊六十一周年記念祝賀会の日だった。
私が大変お世話になった海軍兵学校出身で、終生海軍士官の心意気をもった財界人、故高橋季義さんのご子息である高橋忠義さんが基地司令をされているので、大阪平野の東の羽曳野から西の神戸東灘まで走りに走って参加させていただいた。
開催時刻には大幅に遅れたが、潮の香りが満ちた阪神基地内の会場に到着すると鏡割りの直前で、司会者から「挨拶を、一言、一言だけ」と言われたので登壇し、一言述べた。
「高橋司令、そして皆さん、おめでとうございます。帝国海軍!Our Imperial Navy!万歳!」
次に、懇親会に入ったが、ビールを飲み始めれば直ぐ参加者の本音が飛び交う。「今まで大勢挨拶したが、何を言っていたのか分からない。西村さんの挨拶が一番短くて一番よかった」と異口同音に言ってくれた。
その後、実に多くの人からお励ましの言葉、感謝の言葉そして握手を頂いた。その大勢の方々に応対していたので、額に汗が噴き出てきた。
「頑張ってください。当たり前のことを言った西村さんを非難するやつがまちがっている」
「よくぞ言ってくれた、ありがとう、頑張って」。ありがたさに、胸が熱くなる。
多くの人が励ましてくれた基地隊開隊記念の会が終わり振り返ると、この十日ばかりの間に、軍・自衛隊関係の行事参加が多かったなあと思えた。
 
先ほど、「一言、挨拶を」といわれて登壇したとき、咄嗟に、
「Our Imperial Navy!万歳!」と口から出たのは、五月二十六日に、百八年前の我が連合艦隊とロシアのバルチック艦隊との決戦海域を遠望する北対馬の岬の上で、祖国に勝利をもたらした東郷平八郎司令長官と勇敢な将兵を讃え、日露戦没将兵の慰霊をしてきたからだ。
その前の二十二日朝には、東京の晴海埠頭で海上自衛隊の練習艦隊が世界一周航海に出発するのを見送った。
そして、東郷平八郎元帥の命日である五月三十日には、東郷平八郎元帥の遺髪を奉祀している大阪護国神社で行われた「東郷祭」に参列した。
また、十九日には伊丹の陸上自衛隊第三師団創設記念行事に参加し、二十二日夕刻には、郷友連盟の懇親会に参加した。そして、伊丹、東京、対馬、大阪さらに神戸でも、それらの行事や集会に参加した実に多くの人々は、私を励ましてくださった。
 
よって、この通信において、心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。これは、私個人のことを越えて、我が国家の将来を明るくする大きな時代のうねりの予兆であります。実にありがたいことです。
次に、各行事のなかで、思はず微笑んだり、なるほどなーと思ったり、大いに受けた話を三つほど記しておきたい。
二十二日朝の練習艦隊出港に際して為された海上幕僚長の激励の辞はおもしろかった。幕僚長は、出港間近の海軍士官の卵達に「帝国海軍のユーモアの伝統を受け継ぐように」と述べたのである。
なるほどなー、上手く言ったな。ほんとうは帝国海軍の魂を受け継げと言いたかったのだろう。
そして、私は、バルチック艦隊との国家存亡をかけた決戦に備えて火の出る訓練を続けている連合艦隊の将兵達の何とも言えないユーモアを思い出して笑ってしまった。
彼らは、懸命にバルチック艦隊の各艦の形と名前を覚えた。その覚え方はこうだ。
例えば、戦艦アレキサンドル三世は「あきれ三太」、ボロジノは「ぼろ出ろ」、ドミトリーゴンスコイは「ゴミ取りごん助」、オソトラービアは「押すとペシャ」。
彼ら将兵は生死をかけた海戦の最中に、「ゴミ取りごん助、被弾」、「あきれ三太、火災」などと叫んでいたのだろう。
海幕長は、これを知っていて帝国海軍のユーモアを継承しろ、と言ったのであろうか。生死の節所における帝国海軍のこのユーモア、是非継承してほしい。
第三師団創設記念行事が終わってバスに乗って会場を去ろうとしていたとき、広いグラウンドのなかで隊員達が薬莢をうずくまって拾っている。
それをみたとき、十代の頃に、ある親しい実戦経験者が言ったことを思い出した。「眞悟ちゃん、民間人を三十万人なんか殺せるはずないんや。一発撃つ度に薬莢を拾って走らなあかんねん。それほど貧しかったんや日本軍は。無駄に撃つ弾はなかったんや」
郷友連盟の懇親会での挨拶で、慰安婦に関するこの度の騒動に関して、分かりやすく喩えると次の通りだと言って説明した。それは大いにうけた。
「戦場に置き換えて見たら分かりやすい。私は、維新の会の国会議員団に、この宣伝戦における攻撃目標が分かった、それは、『性奴隷』というウソの訳語が世界に広げられるのを断じて阻止することだ、と敵の方向を指さした。
そして、みんな塹壕から出て戦おうと言った。すると、塹壕から出た私の後ろの塹壕の中から、私の背中を目がけて弾を撃つ奴がいた」
杜父魚文庫

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