12871 アメリカは靖国参拝をどうみるか  古森義久

アメリカが日本の閣僚や議員たちの靖国神社参拝をどうみているのか。アメリカといっても、もちろん一枚岩ではない。ではオバマ政権などんな態度なのか。そのへんの事情をレポートにまとめました。
■ワシントンでの靖国論議
日本の閣僚らの靖国神社参拝がアメリカ側でも論議を生んだ。いわゆる靖国問題は今回は従軍慰安婦とか「侵略」の定義という関連テーマとからんで日本側の、とくに安倍政権の歴史認識として提起された。
靖国問題は7年ほど前の小泉政権時代にも、ワシントンでは論じられはしたが、当時とくらべ今回は批判的な論調が多くなった。その相違はブッシュ前政権とオバマ現政権の政治姿勢の違いにも帰せられるようだ。
ただし靖国問題へのアメリカの反応には、光と影があり、いちがいに「アメリカはとにかく日本を批判」とみるのも正確ではない。日本側の反靖国、反安倍政権のメディアがことさら米側の批判的な言辞を拡大して伝え、いわゆる歴史問題での安倍政権に対する「アメリカ・カード」として政治利用するという側面にも注視すべきなのだ。 
周知のように靖国神社の春の例大祭に合わせて国会議員合計168人が4月23日、集団で参拝した。麻生太郎副首相ら閣僚計4人も同時期に参拝をした。
中国や韓国の政府はすぐに日本側でのこの参拝を「軍国主義の復活」とか「侵略戦争の美化」として糾弾した。
アメリカ側ではニューヨーク・タイムズがさっそく4月24日付の社説で「日本の不必要なナショナリズム」と題しての批判を表明した。
 
「日本の168人もの議員たちが第二次大戦で戦犯とされ、処刑された指導者たちをも含む戦没者を祀った神社に参拝した。この神社の問題は日本の20世紀の帝国構築と軍国主義に苦しまされた中国や韓国にとっては非常に神経を悩まされる」
 
同社説はそして日本は中国との間では尖閣問題、韓国との間では北朝鮮の脅威への共同対処という大きな課題を抱えているときに、政治家の靖国参拝で「(中韓の)敵意をあおる」ことは避けるべきだ、と主張していた。
日本の大手メディアはこの社説を「アメリカも靖国参拝には反対」の例証として報道した。
安倍首相はこうした動きに対して「(靖国参拝阻止の)どんな脅しにも屈しない」と述べるとともに、「侵略の定義は国と国との関係で、どちらからみるかで違う」とも言明した。
するとアメリカ側の反応も広がった。ウォールストリート・ジャーナルは4月27日付の社説で「一人の男の侵略は」と題し、安倍首相の侵略観は「修正主義」であり、「恥ずかしい」と非難した。
ワシントン・ポストも同28日付け社説で「歴史を直視できない安倍晋三」という見出しの同趣旨の批判を表明した。
学界でも民主党系の大手外交研究機関「外交評議会」の日本研究部長シーラ・スミス氏が「なぜ靖国の分裂的な政治論議を再燃させるのか」という論文を発表して、やはり靖国参拝への反対を述べた。(つづく) 
杜父魚文庫

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