12886 【主張】尖閣棚上げ論 中国の宣伝戦に手貸すな   古澤襄

産経新聞は論説に当たる「主張」で野中・北京発言を厳しく批判した。同席した古賀誠(自民)、仙谷由人(民主)両氏も中国の反日宣伝に加担したものとして同罪であろう。
<野中広務元官房長官が北京で中国共産党の劉雲山政治局常務委員ら要人と会談し、「尖閣諸島の棚上げは日中共通認識だった」と伝えたことを、会談後の記者会見で明らかにした。
1972(昭和47)年の日中国交正常化交渉の際、当時の田中角栄首相と中国の周恩来首相との間で合意があったという趣旨の話を、田中氏から後に聞いたという内容だ。しかし、伝聞に基づく発言で、確たる証拠はない。
岸田文雄外相は「外交記録を見る限り、そうした事実はない」と否定し、「尖閣諸島は歴史的にも国際法的にも日本固有の領土だ。棚上げすべき領土問題は存在しない」と述べた。当然である。
尖閣棚上げ論は、中国の最高実力者だったトウ小平副首相が持ち出したものだ。日中平和友好条約調印から2カ月後の78(昭和53)年10月に来日したトウ氏は「10年棚上げしても構わない。次の世代の人間は、皆が受け入れる方法を見つけるだろう」と述べた。
その年の4月、中国の100隻を超える武装漁船群が尖閣諸島周辺で領海侵犯による威嚇を繰り返した事件から半年後のことだ。当時の福田赳夫内閣はトウ氏の発言に同意しなかったものの、反論しなかった。不十分な対応だった。
しかも、中国はトウ氏の「棚上げ」発言から14年後の92(平成4)年、尖閣を自国領とする領海法を一方的に制定した。そもそも、中国に「尖閣棚上げ」を語る資格はない。
野中氏の発言に先立ち、シンガポールのアジア安全保障会議で、中国人民解放軍幹部が「(尖閣の領有権)問題を棚上げすべきだ」と蒸し返した。これに対し、菅義偉官房長官が「尖閣に関し、解決すべき領有権問題は存在しない」と反論したのも当たり前だ。
尖閣棚上げ論には、1月下旬に訪中した公明党の山口那津男代表も「容易に解決できないとすれば、将来の知恵に任せることは一つの賢明な判断だ」と述べた。同じ時期、鳩山由紀夫元首相は中国要人に、尖閣は「係争地」との認識を伝えた。
今回の野中氏の発言も含め、中国メディアは大きく報じた。中国の真の狙いは尖閣奪取だ。訪中する日本の政治家は、自身の国益を損ないかねない発言が、中国の反日宣伝に利用される恐れがあることを自覚すべきである。(産経)>
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