5月26日ドイツを訪問した中国の李克強首相は、ベルリン郊外のポツダムで演説し、尖閣諸島を念頭に?日本が盗み取った?と主張し、「世界平和を愛する人々は、第2次大戦の勝利の成果を破壊したり否定したりしてはいけない」と述べた。
李氏の主張は、ポツダム宣言に日本は台湾澎湖を中国に返還すべきと書かれていた事を指している。サン・フランシスコ条約では、日本は台湾澎湖の主権を放棄すると明記してあり、台湾澎湖は中国に返還されたのではない。
李氏の演説の趣意はポツダム宣言の通り、台湾は中国の領土であるべきだ、そして尖閣諸島は台湾の領土だから尖閣諸島も中国の領土と言うことだ。つまり現状は台湾は中国領土でない、だから「尖閣諸島は中国の領土ではない」ということである。尖閣諸島は中国の領土ではない、台湾は中国の領土でもない。盗っ人猛々しい、語るに落ちるとはこのことだ。
この演説のあと日本の菅義義官房長官は29日、「尖閣諸島は下関条約(馬関条約)の前から日本領だった」と反論した。
すると中国外交部のスポークスマン洪磊は翌30日の記者会見で、「中国府はサン・フランシスコ条約を非法で無効としている。絶対にこの条約を認めるわけにはいかない」と述べた。
続いて洪磊は、中国政府は何回もサン・フランシスコ条約に参与しなかったし署名もしていないので、この条約を非法で無効であると声明している、と述べた。
洪磊は更に、サン・フランシスコ条約の第3条で北緯29度以南の南西諸島を米国の信託統治に置いたが、尖閣諸島はこの中に明記していないと述べた。
これはおかしな理論である。サン・フランシスコ条約を絶対に認めないと言った直後に条約第3条の内容を認める発言をしている。中国に有利な箇所は認めて不利な箇所は認めないということか。
●尖閣諸島は日本の領土である
尖閣諸島が日本領であるのは国際的に認められた証拠がある。ウィキペディアには「日本政府は尖閣諸島の領有状況を1885年から1895年まで調査し、世界情勢を考慮した上で隣国の清国など、いずれの国にも属していないことを清朝に確認した上で、閣議で決定し沖縄県に編入した」と書いてある。つまり清朝もこの事実を認めていたのだ。
台湾(中華民国)が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのは1971年になって尖閣諸島附近の海底に石油や天然ガスなどの地下資源埋蔵の可能性が確認されてからである。台湾では多くの人が尖閣諸島(魚釣島)は台湾の宜蘭県に所属していたことが宜蘭県誌に書いてある、と主張しているが、1971年から今日に至るまで、宜蘭県誌の何年目第何ページに書いてある、と証拠を挙げた人はいない。
楊基銓先生は日本の台湾統治時代の宜蘭県長だったが、尖閣諸島は宜蘭県に属していないと語っていたと楊劉秀華さん(楊夫人)は話していいる。
中国の主張はもっと不合理だ。尖閣諸島は台湾領で、台湾は中国領だから尖閣諸島も中国領であるという二段論法の根拠は、ポツダム宣言、またはそれ以前の通称カイロ宣言(署名がない)に遡らなければならない。しかしポツダム宣言のあと48カ国が協議の末に署名したサン・フランシスコ条約には台湾澎湖を中国に返還すると書いていない。
中国はサン・フランシスコ条約に参加していないからこれを認めないというが、中国はポツダム会議にも参加していない(蒋介石も参加していない)。二つとも参加していないのに片っ方だけ認めるという理屈は通らない。
●サン・フランシスコ条約と中国
中国はSFPTに参与しなかったのではない、参加を拒否されたのである。1951年ごろサン・フランシスコ条約の協議が始まったが、当時はアメリカと国交のあった中華民国の駐米大使・顧維鈞は米国の国務院顧問ダレスと何度も参加の交渉を繰り返していた。
しかしダレスは中共も中華民国もサン・フランシスコ条約に参加させないと告げたので、蒋介石はやむなく(米国同意のもとで)日本と個別に?日華条約?(中華民国は中日和約と呼ぶ)を制定したのだった。この経緯は中華民国外交問題研究会の出版した「金山和約與中日和約的関係」(1980年)に詳しく書かれてある。
日華条約は1972年に日本が中国と国交開始を宣言して、中華民国と外交関係を絶ち、失効した。最近になると馬英九は中国の不興を懼れて中国を名乗らなくなり、既に失効した?中日和約?を「台北和約」と呼ぶようになった。恥かしいかぎりだ。
サン・フランシスコ条約は48カ国が参加署名した国際条約である。中国や中華民国が参加できなかったから認めないと力んでも国際条約は有効である。ポツダム宣言は単なる声明であり、終戦後この声明の通りにしなかった国際条約の方が有効である。勝手にSFPTが無効でポツダム宣言が有効なんて言えたものではない。
つまり、李克強や洪磊の主張は、(1)中華民国は亡命政府であること、(2)中国は無頼政権であることを証明したに過ぎない。(頂門の一針)
杜父魚文庫
杜父魚文庫
12913 中国は桑港条約を認めるべき Andy Chang

コメント