12946 「日韓共生の地」と大阪で韓国人女性が発行する「歴史新聞」  古澤襄

<大阪や京都、奈良などに伝わる韓国ゆかりの“歴史観光史跡”にスポットを当てて紹介する月刊紙『日韓歴史観光新聞』(A4判、4ページ)が創刊され、話題を集めている。編集長を務めるのは韓国・ソウル市出身で、大阪市生野区在住の歴史研究家、姜信英(カン・シニョン)さん(50)。「日韓の古代と現代を橋渡しする観光ガイドとしての役割を果たすことができれば」と姜さんは期待を込める。
■知られざる韓国ゆかりの史跡紹介
創刊は今年3月。毎月1回のペースで発行し、今月には4号を数える。1面には研究者や行政関係者など、日韓交流に取り組む人たちのインタビュー記事を掲載。また東アジア古代史研究の第一人者、上田正昭・京都大学名誉教授による歴史コラム「大阪のなかの渡来文化」を連載したり、韓国の最新情報なども盛り込む。
とりわけ注目を集めるのが、あまり知られていない、関西にある韓国ゆかりの史跡の紹介。
創刊号では、大阪市生野区の御幸森天神宮にある「難波津の歌」の和文・ハングル併記歌碑を取り上げた。
「難波津に咲くやこの花冬ごもり、今は春べと咲くやこの花」。この歌は、1600年前、朝鮮半島の百済から日本に渡来、論語と漢字文化を日本に伝えた学者、王仁(わに)博士が、仁徳天皇の即位を祝って詠んだ日本最初の和歌とされる。
百済からの渡来人が多く移り住み、古代から日韓の親交が深い同区の新たな歴史名所にしようと平成21年、和文・ハングル併記でこの歌をつづり、解説した歌碑が境内に建てられた。
「大阪を中心に関西へ、さらに将来的には日本全国をめぐり、日韓の歴史を残す観光遺跡を紹介していく予定です」と姜さんは語る。
■日韓交流の架け橋に
姜さんはソウル市内の高校を卒業後、同市の貿易会社に就職。取引先に日本企業が多く、職場で日本語に興味を覚えた姜さんは地元外大の観光通訳科に進学、日本語の勉強を始めるが、「正しい日本語を学びたい」と一念発起し留学を決意。
大阪市生野区の知人宅にホームステイし、大阪明浄大学(現・大阪観光大学)観光学部で日本語と観光について学ぶ中で、日韓交流に貢献した王仁博士の存在を知り、以来、大阪で暮らしながら日韓の歴史の研究に取り組んできた。
上田正昭・京大名誉教授は「日韓友好の史跡が多い大阪を拠点に刊行されるユニークな新聞。古代から近世の密接なつながりを物語る史実に即し、日韓の歴史認識の共有を目指す試みは世界唯一の新聞と言っていい」と関心を寄せる。

姜さんは「大阪は古くから日韓交流の歴史拠点。現在も十数万人の在日韓国人が大阪で暮らしており、この“日韓共生の地”から、両国民が歴史認識を共有できる情報をこの新聞で発信していければ」。ほぼ一人で取材から編集までをこなす姜さんの夢は、自身が観光と歴史を結びつけた日韓交流の架け橋となることだという。(産経)>
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました