■改憲勢力糾合で3分の2も可能に
参院選まで残るところ40日となったが、選挙情勢を見るとアベノミクス効果が依然持続して、自公の政権与党で過半数は固い。場合によっては安定多数の129議席も可能となりうる流れが出てきている。焦点は改憲派で3分の2議席を達成できるかどうかだ.恐らく改憲4党だけでは難しいだろう。
しかし、選挙後の公明党との調整や、民主党の改憲派の動きによっては可能だ。共闘ができない野党に敗北ムードがただよっており、首相・安倍晋三は何とか株価を高めに維持して選挙の好調に結びつけようと躍起になっている。
長年の経験から見て選挙前1か月の世論調査の動向が、国政選挙にそのまま反映する可能性が高い。NHKの10日放送の調査によると内閣支持率は62%と高水準を維持。政党支持率も自民党が41.7%と驚異的な数字で断トツ。他党は民主党が5.8%、公明党が5.1%、日本維新の会が1.5%と低迷している。
読売の11日付記事では同様の傾向が見られ、自民44%、民主7%、維新5%だ。長期停滞の経済情勢にアベノミクスが突破口を開けたと好感されたことが最大の理由だ。NHKでは安倍内閣の経済政策評価の回答が69%に達した。参議院選挙で重視したい政策も「景気対策」が83%で圧倒している。
したがって参院選はアベノミクスをなんとか維持したままなだれ込みたい安倍と、ほころびを見つけて突破口を開きたい野党とのせめぎ合いの構図だ。その安倍の心胆を寒からしめたのが5日の成長戦略の発表だ。
何と発表の途中から株価は急落し始めたのだ。法人税減税を期待していた市場は、「規制緩和も踏み込みが足らない」(市場筋)として打ち出した施策に嫌気したものだ。安倍は慌てて9日のNHKで秋の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置づけ、法人税減税をほのめかした。その影響もあって10日は4年8か月ぶりの上昇に転じた。
安倍も官房長官・菅義偉も「株価に一喜一憂しない」と述べているが、その実一番気にしているのが株価の動向だ。海外のハゲタカファンドの操作もあり、危うい状況が続く。安倍らは何とか40日間この調子を維持してくれるように日日八百万(やおよろず)の神に祈る心境なのだ。
一方で野党は隙あらばアベノミクスに難癖を付けようと虎視眈々と狙っているが、貧すれば鈍するだ。9日のNHKの党首インタビューという絶好の機会で民主党代表・海江田万里と生活代表・小沢一郎が2人ともずっこけた。海江田は「安倍政権が誕生してから日米首脳会談が行われていない」と発言した。
今年2月の会談をはやくも忘れるという“健忘症”ぶりを発揮。小沢は小沢で参院選の当選者見通しについて「複数の当選を果たしたい」と発言した。複数とは2人以上の数を指すのであり、ついつい本音を吐いてしまったのだ。慌てて「二ケタ」と言い換えたが、とても二ケタはいかない。
自称「選挙の神様」小沢は、実際には自民圧勝にお手上げなのが本音である。30日夜も講演で、「自民党はせっかく衆院で多数を取ったので解散しない。次期衆院選は、3年後の参院選とダブル選挙になる。その時に選択肢を用意できれば政権交代は可能だと確信している」と述べている。
小沢はあまりの自民党の好調ぶりにさじを投げていると言ってもよい。3年後のダブル選挙に賭けるしかないのだ。小沢の戦略は、参院選後にあわよくば民主党を改憲派と護憲派に分断して、改憲派は自民党との合流に追いやり、護憲派を率いてリーダーになるところにある。
腹心の参院議員会長・輿石東と日夜復権のシナリオを練りつつあるようだ。 こうして明暗が極端に分かれたまま、参院選に突入することになる。
筆者は既に3月12日の記事で「自民・公明両党で過半数を維持できる可能性が強まった」と分析しているが、この流れは変わるまい。参院での与党の非改選議席は、自民50、公明9の計59。参院選で自公両党合わせ63議席以上を獲得すれば、参院定数242の過半数122に達する。
この流れは、よほどの株価大暴落や閣僚や党幹部の大失言がない限り変わるまい。衆参両院で、いずれも与党が過半数を持つことになり、安倍政権は久しぶりに長期政権の軌道に乗ることになる。幹事長・石破茂はさらなる目標を「安定多数」に置き始めた。「与党で過半数、できれば安定的な議席をいただきたい」と述べている。
「安定的な議席」とは参院の各委員会で与党がすべての委員長を出したうえで、委員の数で野党と同じ数となる129議席だ。これは筆者がやはり「自公の勢力分野が過半数の122議席を上回り130議席前後に達する可能性が出てきた」と指摘している流れである。
さらなる焦点は、参院で憲法改正の発議に必要な3分の2の162議席を改憲勢力で越えられるかどうかだ。
自民、維新にみんなの党、新党改革の4党に無所属の「改正派」議員を加えた非改選組の議席数は63ある。参院選で「改正派」が3分の2に届くには、4党で99議席を得る必要がある。維新が共同代表・橋下徹の慰安婦発言で急降下しており、これを民主党が食う可能性が出てきている。
4党での3分の2は微妙だが、改憲問題は様々な多数派形成方法がある。まず民主党の護憲派を糾合する。さらには「9条に自衛隊の存在を加憲する」と言い出した公明党との調整もある。やり方によっては改憲派が3分の2を越える状況は十分に現出しうる流れと見ても良いだろう。(頂門の一針)
杜父魚文庫
12959 自公過半数突破で安定議席も視野に 杉浦正章

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