親日的なトルコで発生している騒擾は、イスラーム回帰色を強めるレジェップ・タイイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdoğan)首相と、イスラーム回帰に反発する世俗派の対立が根底にあるだけに、妥協が成るのか分からない。
東洋と西洋の結節点といわれるトルコは、ローマ帝国の滅亡後、東ローマ帝国として栄えたが、東からムスリム(イスラム教徒)が攻め込み、イスタンブルが陥落してオスマン帝国を樹立した。
19世紀にムスタファ・ケマル(アタテュルク)による軍部革命によって共和制を宣言、オスマン王家のカリフをイスタンブルから追放して、西洋化による近代化を目指すイスラム世界初の世俗主義国家トルコ共和国を建国した。”世俗主義”とは旧態依然たるカリフ支配から脱却する近代化の呼称である。
2003年の選挙で選ばれたエルドアン首相は、経済の好調を背景に高い支持率を得て、2007年の総選挙にも勝利して二期目に入った。イラン、ロシア、アルメニアなど、EU諸国以外の国々とも関係強化を図ってきたが、2009年以降イランとの関係を強化して、イスラエルとの関係は悪化している。
イスラーム回帰色が強くなるにつれて、都市部の知識階級やリベラル派、ムスタファ・ケマルを信奉する世俗主義の軍部などから反発が生まれている。
このような背景があるので、エジプトなどアフリカ北部で吹き荒れた「アラブの春」とは違う側面がある。むしろ極端なイスラーム回帰に反発する大衆運動だといえる。エルドアンは姦通罪の復活法案(のち廃案)、大学など公の場での女性のスカーフ着用など世俗派を刺激する政策をとってきている。
「現代のスルタン」とも称せられるエルドアンだが、いまの騒擾をみていると強行策は失敗する可能性がある。
杜父魚文庫
12976 「現代のスルタン」エルドアンの強行策は? 古澤襄

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