<核開発問題などで欧米と対立するイランの大統領選挙は、改革派の支持を受け欧米との関係改善などを訴えたロウハニ氏が過半数の票を獲得して、保守強硬派の候補に対し地滑り的な勝利を収めました。
イラン大統領選挙は14日に投票が行われたあと即日開票され、翌15日に内務省が最終結果を発表しました。
それによりますと、投票率は72.7%で、改革派や穏健派の支持を受け、欧米との関係改善などを訴えたロウハニ氏が、得票率で50.7%にのぼる1861万票余りを獲得しました。
2位は保守強硬派でテヘラン市長のガリバフ氏で得票率は16%余り、3位は同じく保守強硬派で核交渉の責任者を務めるジャリリ氏で得票率はおよそ11%でした。
この結果、ロウハニ氏が当選に必要な過半数の票を獲得し、大統領に当選しました。
ロウハニ氏は核開発問題を巡る欧米との対立で、イランが制裁措置を受け国内経済が混乱するなか、変化を求める国民の支持を集めました。
ロウハニ氏は当選後、声明を発表し、経済の再生に力を尽くすと宣言すると共に「イランとの関係を拡大し平和を構築したいのなら、国際社会もイランの権利を尊重し、公正な態度で対話に臨むべきだ」と述べ、欧米諸国に歩み寄りと対話を求めました。
ロウハニ氏が欧米との妥協を拒む保守強硬派に大差をつけ地滑り的な勝利を収めたことで、今後、核開発問題やシリア情勢などを巡って、イランと欧米側が新たな関係を築けるか注目されます。
■最高指導者が祝意
ロウハニ氏が大統領に当選したことについて、イランの最高指導者ハメネイ師は国営放送を通じて「ロウハニ氏に祝意を伝えたい。選挙に参加した国民にも感謝をしている」と述べました。
そのうえで、ハメネイ師はみずからに近い保守強硬派の候補者たちがロウハニ氏に敗れたことを踏まえ「ロウハニ氏は選挙戦では他の候補者と争ったが、今後はそれを友好に変えて欲しい。今こそ責任を持って行動に移る時だ」と述べ、ロウハニ氏に保守強硬派とも協力して政権運営にあたるよう求めました。
また、8月に任期満了となるアフマディネジャド大統領も「私も新政権に協力していきたい」とロウハニ氏を祝福する声明を出しました。
その他、ロウハニ氏に敗れた保守強硬派のガリバフ、テヘラン市長や、最高安全保障委員会のジャリリ事務局長などもそれぞれ祝意を示し、ロウハニ氏の当選を受け入れる意向を示しました。
■各国の反応
アメリカのホワイトハウスは15日、声明を出し、「イランの人々の投票を尊重する。政治プロセスに参加して意志を示したことを祝福する」と歓迎しました。
そして「今回の選挙は透明性に欠け、メディアやインターネットの検閲が行われ、さらに言論の自由も制限される状況で行われた」とイラン政府を批判したうえで、「政府の妨害にもかかわらず、未来の為に行動することを選択した」とイラン国民の選択を評価しました。
また、イラン政府に対して、国民の意思を尊重するよう求めるとともに「アメリカは核開発を巡る国際社会の懸念を外交的に解決するために、イラン政府と直接、取り組む用意がある」として、核開発問題についてアメリカとの直接協議に応じるよう改めて呼びかけました。
ロウハニ氏が当選したことについてイギリスの外務省が声明を発表しました。
この中で、イギリスの外務省は「ロウハニ氏にはこの機会をいかして、将来的にイランを異なる道筋に向けることを求める」としています。
そのうえで、「核開発の問題を巡る国際的な懸念に対処し、国際社会と建設的な関係を築くとともに、イランの人々のために政治や人権状況の改善に取り組んでもらいたい」とし、国際社会との関係改善などに期待感を示しました。
また、フランスのファビウス外相は声明を発表し、イランとの関係改善へ向けて期待を示しました。
この中で、ファビウス外相は「核開発問題やシリアの内戦など、国際社会の中でのイランが果たす役割への期待は高まっている」と指摘しました。
そのうえで、「我々はイランの新しい大統領と協力する用意がある」と述べて、イランとの関係改善へ向けて期待を示しました。
一方、イスラエル外務省の報道官は声明を発表しました。
声明は「イランの核開発計画をこれまで決定してきたのは最高指導者のハメネイ師であり、大統領ではない」として、今回の大統領選挙の結果が直ちに核開発問題に影響しないとする見方を示しました。
そのうえで、「イランに対する評価は選挙後、核開発やテロの問題でどのような行動を取るかによって決まる。イランは国際社会の求めに従って核開発計画を停止し、テロの拡散をやめなければならない」として新たな大統領に選ばれたロウハニ氏を強くけん制しました。(NHK)>
杜父魚文庫
13009 イラン大統領選 ロウハニ氏勝利 古澤襄

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