13019 中国は都市化を急ぎすぎて失敗した   宮崎正弘

2025年までに中国の都市化が目標だそうです。9億人の人口が都市に住むにはあと二億五千万人が農村を棄てる計算。都市化を急ぎすぎて失敗した例はあまたあるが、とりわけ悲惨な結果はインド、メキシコ、ブラジルである。
都市へ強制移動させられても、農民出身者にはエンジニア系の職業がなく、移転に伴う補償金を食いつぶせば、いくら住宅が廉価だったとはいえ、水道光熱費は支払い続けなければならない。
まして農村に残った人々は若くても40代から50代、都会の職業といえば、ビルの夜警くらいしかない。農民戸籍では年金ももらえないので餓死するしかないが。
本来ならば今年三月の全人代が、この都市化計画は提案され承認が得られる筈だったが、地方政府の厖大な借金、銀行の不良債権対策に追われ、都市化計画(2025年までにあと2億五千万人を都市へ強制移動)は提案が遅れた。
つまり地方政府にとっては、もはや低所得者住宅を建設する余力がなく、計画は計画、実行するには予算がないというわけだ。
そのうえ農民の不満が噴出し、各地で暴動が起きている。暴動件数、いまや年間20万件、手の施しようがなくなった。
「あと12年間に二億五千万人の農民を都市へ移動させるなどというのは、米国の全人口がほかへ異動すると同義語である。
1980年代の農民人口は80%だった。現在の中国の其れは47%だが、ほかに17%が都市へ流民となって流れ込んだ。政府の計画通りに2025年までに都市人口が9億人とするには毎年6000億ドルの資金が必要となる」(ニューヨークタイムズ、2013年6月15日付け)。
他方、不動産投機によるマンションの空き屋状況はますます悪化しており、中国全土の空き屋および空き室は最低みつもっても8500万戸、最悪一億戸を超えている。これらは投機、投資のために金持ちが購入したもので、低所得者が住むわけには行かず、いずれコンクリートの腐食が始まって廃屋となる危険性が高い。小誌でもたびたび問題視してきたように、各地に鬼城(ゴーストタウン)が出現している。
ちなみに日本は投機による空き部屋は殆ど無いが、都市化により地方の過疎化、駅前のシャッター通り化により、全国で「放置された空き屋は756万軒。東京では75万戸の空き屋および空き室があり、うち92・2%がマンションやアパアートの共同住宅」であるという。
そして「東京都都市整備局によれば、2011年時点で都内のマンションの総数は133188棟、約301万戸。2040年になると約半数が築年数50年を超える」(『文藝春秋』、13年7月号)。
こちらのほうも、大きな問題である。つまり日本も都市化現象が、総合的に社会の衰滅をもたらしているのである。
杜父魚文庫

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