チャベス死去以後のラテン・アメリカ世界の「反米」も様々に・・・。米国の機密を漏洩し、中国の明らかな保護の下、香港の豪華ホテルに滞在していたスノーデン(元CIA職員)が、突如モスクワを経由してエクアドルへ向かった。事実上の亡命劇を背後で演出したのは中国の情報機関と推測される。
第一にスノーデンの機密暴露は、習近平がオバマとの首脳会談のためカリフォルニア入りする直前であった。政治的タイミングからいえば抜群である。
第二にオバマは習近平に対して中国情報機関によるハッカー攻撃を非難する段取りだったのに、「米国も中国にハッカーをかけていた」とするスノーデン証言で、中国の立場はイーブンになったことである。
第三にエクアドルへ亡命させるという政治的配慮だ。
米国の目の間にキューバがあるように、その沖合を南下すればベネズエラ。急逝したチャベス前大統領は反米の旗を高く掲げて、ペルー、コロンビアなどを糾合しラテン・アメリカの反米運動のトップだった。
これに替わろうとする反米政治家が、エクアドルのコレア大統領である。
エクアドルは近年、中国との貿易が急造し、中国からの援助で潤い、反米色をますます鮮明にした。ところがおかしな事に反米国家でありながらエクアドル国内に通用するのは米ドルなのである。
この点ではベネズエラも、いやベトナムでも、カンボジアでも、あのイランでも米ドルが通貨である。ましてエクアドルは自国通貨を廃止し、法定通貨を米ドルにしたばかりである。
米国がもし本格的にエクアドルに経済制裁を加えれば、ガラパゴスという唯一の観光資源しかない経済小国(日本はバナナを輸入しているが)、結局そう長くはスノーデン亡命を放置できないのではないか。緊急避難先という色合いが強いのではないか、と思われる。
杜父魚文庫
13077 中国のスパイ、スノーデンの亡命を受け入れたエクアドル 宮崎正弘

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