13092 スノーデン問題で「孤立無援」、オバマ外交の限界露呈か 古澤襄

<[ワシントン 23日 ロイター]オバマ米大統領は就任以来、他国に手を差し伸べることを外交政策の基礎としてきた。対ロシア関係のリセット、中国とのパートナー関係構築、イランやベネズエラなどの敵対国との新たなスタートの模索などがその例だ。
しかし、米国家安全保障局(NSA)による情報収集活動を暴露し、スパイ活動取締法違反容疑などで訴追された中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者(30)が滞在先の香港からモスクワへ渡ったことは、そうした手法の限界を露呈した。オバマ大統領が友好関係を求めた、そして最近会ったばかりの各国指導者らが、オバマ氏を鼻であしらったのだ。
スノーデン氏や政府等の内部文書を公開する民間サイト「ウィキリークス」による挑戦を見れば、米国が示す善悪の基準に従おうとしない国が存在することがよく分かる。香港当局が米当局の身柄引き渡し要請を拒否したことを受け、スノーデン氏は23日に香港を発った。
中国政府は単に、米国との多面的な関係において障害になる可能性を排除したかっただけなのかもしれない。しかし、スノーデン氏が香港から渡った先は、昨年5月にプーチン氏が大統領に返り咲いて以来、米国との関係が悪化しているロシアだった。
スノーデン氏支援を明言しているウィキリークスはツイッターを通じ、同氏が米国と対立するエクアドルへ向かう意向だとコメント。エクアドルのパティーニョ外相もツイッターで、スノーデン氏の亡命申請を受け取ったと明らかにした。
米政府が、スノーデン氏の送還に向けて外交的、法的、政治的な力を全て結集するのは間違いない。事情に詳しい関係筋は23日、同政府がスノーデン氏のパスポートを無効にする措置を取ったと明らかにした。
上院情報特別委員会のファインスタイン委員長は同日出演したCBSの番組で、スノーデン氏が入手した機密情報の規模について、米政府は把握していないようだと述べた。同氏が200以上の情報を入手した可能性もあると明かした。
スノーデン氏は22日付の香港紙チャイナ・モーニング・ポストで、米国が中国の携帯電話ネットワークやメッセージをハッキングしているほか、大学サイトなどにも侵入していると語った。こうした報道が、米当局の引き渡し要請にもかかわらず、香港側が同氏の出国を許可した理由になったかどうかは定かではない。
複数の米当局者は私的な意見として、中国政府がスノーデン氏の出国を容認したと指摘する。また、米シンクタンク、ブルッキングス研究所の中国政治専門家、李成氏は「中国はこれで一安心に違いない。(スノーデン氏に)長く留まってほしくなかったはずだ」とコメント。「事態が制御不能になれば、カリフォルニアでの(米中)首脳会談の成果が損なわれる。中国はロシアが今後の主要な標的となることを非常に喜んでいるだろう」との見方を示した。
<ロシアとの関係>
オバマ大統領は過去数カ月、内国歳入庁(IRS)による保守系政治団体への不適切な税審査や司法省によるAP通信記者への通話記録入手で批判を受けたものの、スノーデン氏をめぐる問題ではこれまでのところ、激しい非難には直面していない。
ほとんどの議員らが怒りを向ける先は、スノーデン氏自身や、コンサルティング会社ブーズ・アレン・ハミルトンの契約社員だった同氏が当局の機密を扱う職に就き、最も保護されるべき情報収集プログラムの証拠を持ち逃げされることになったシステムだ。
しかし、オバマ大統領に批判的な共和党のピーター・キング下院議員は、米国へのテロ攻撃を阻止してきたと当局が説明する監視プログラムについて、大統領がもっと積極的に擁護すべきだなどと訴える。
キング議員はCNNで、「大統領がこの問題で沈黙していることは問題だと思う」と非難。また、「われわれは今、まるで漂流しているようで、これらの関係国はそうした状況を利用している」と指摘した上で、「大統領や米国にとっては外交的な打撃だ」と語った。

ロシアがスノーデン氏をエクアドルに向けて出国させれば、ブッシュ前政権で冷め切った対ロシア関係を「リセット」しようとしたオバマ大統領の政策が完全に終了する可能性もある。
米ロ両国は最近、ロシアの人権問題や米国人によるロシア孤児の養子縁組問題、ミサイル防衛、そしてシリア内戦をめぐり、激しく衝突している。
先週の主要8カ国(G8)首脳会議で撮影された、握手を交わしながらも、笑みを浮かべず宙を見つめているオバマ・プーチン両大統領の写真は、現在の両国関係を示している。
民主党のチャールズ・シューマー上院議員はCNNの番組で、プーチン氏がスノーデン氏の逃亡を支援していると強く非難。「協力関係にある国は互いに謙虚に接するべきだが、プーチン氏はシリアやイラン、そして今やスノーデン問題で、その指を米国の目に突っ込もうとしているようだ」と述べ、この問題が米ロ関係に深刻な結果をもたらすとの考えを示した。
一方、スノーデン氏に問題の焦点を絞るべきだと語る共和党のリンゼイ・グラハム上院議員はFOXニュースに対し、「彼を地球の果てまで追跡し、法の裁きを与え、この男をかくまうと大変な結果になるとロシア人に分からせるべきだ」と語った。(ロイター)>
<<スノーデン容疑者は数千件の機密所持か、米当局がさらなる暴露警戒>>
[ワシントン 24日 ロイター]米当局による個人情報収集を暴露し、香港経由でロシア入国後、所在が分からなくなっているCIA(中央情報局)元職員エドワード・スノーデン容疑者(30)について、米国の情報当局者は同容疑者がほかにも多数の機密情報を所持したまま逃走を続けているものとみて神経をとがらせている。
米情報当局者は、容疑者が当初想定されていたよりも多くの機密文書を所持しているとみている。また、ウィキリークス創始者のジュリアン・アサンジ容疑者と共闘関係を強めれば、安全保障上の重要性を無視して機密文書を公開するのではないかと警戒している。
捜査関係者がロイターに明かしたところによると、スノーデン容疑者がNSA(国家安全保障局)の契約局員としてハワイで勤務していた際、NSAや英国の情報機関GCHQ(政府通信本部)の活動に関する広範な情報を入手していたという。また同容疑者は一部について、自分のアクセスの痕跡を隠していた。
ある関係者によれば、容疑者が香港へ出国した際、数千に上るNSAの機密文書のコピーを所持していたという。米情報当局者も、具体的な数字には触れなかったものの、容疑者が大量の機密情報を持っているようだと認めた。
今のところ最初にスノーデン容疑者の暴露を報じた英ガーディアン紙も米ワシントン・ポスト紙も、同容疑者が漏らした機密文書の一部しか明らかにしていない。(ロイター)>
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました