中国の景気減速の影響が早くもアジア市場に表れている。ウオン高で経済失速に見舞われた韓国が、この時期に朴槿恵大統領みずから北京を訪れ、中韓首脳会談を行った。困った同士の首脳会談で何ほどの打開策があるのか、GDPの五割を貿易に依存する韓国(日本は二割)だから、中国にすがる気は分かるが日本との友好関係の構築の方が先決ではないか。
英ロイターはJohn Foley氏がコラムで「中国減速の影響はアジア域内でもまだら模様」なる論評を掲げた。中国の景気減速がアジア地域に悪影響をもたらすとの見方を反映、アジア市場で中国株が下落しているものの、日本やオーストラリアの対中輸出が3%から5%に過ぎなくて、影響が遮断されていると指摘した。
これに比して韓国は中国向け輸出がGDPの15%に相当し、10年前の水準から倍増しているから影響が深刻である。朴槿恵大統領はさらなる中国向け輸出の拡大を望むだろうが、減速経済に悩む中国にとって応じることが可能だろうか。
John Foley氏はアジアの貿易相手国の望み通りに中国が輸入を開放していたなら、中国の景気減速はより憂慮すべき問題となっていたと指摘する。韓国に対しては”ない袖はふれぬ”というのが、中国の本音ではないか。
<[北京 25日 ロイター BREAKINGVIEWS]アジア市場の下落は、中国の景気減速がこの地域に悪影響をもたらすとの見方を反映している。しかし事はそれほど単純ではない。
経済規模の大きいアジア諸国の輸出に占める中国向けの比率と、輸出の国内総生産(GDP)における重要性に目を向けよう。中国は過去10年間で急拡大を遂げたが、近隣諸国への影響は予想より小さい。
オーストラリアの例を考えよう。国際通貨基金(IMF)のデータから計算すると輸出の3分の1は中国向け。大半は鉄鉱石や石炭などの鉱物資源だ。しかし中国向け輸出の総額は2012年のGDPの5%にすぎない。日本も同様に影響が遮断されており、中国向けは輸出の5分の1以上を占めるが、わずか3%だ。
これに比べてベトナムは中国の余波が及びやすい。世界の製造業サプライチェーンを構成する低コスト生産国としての役割拡大を反映し、輸出の17%が中国向けだ。これはGDPの13%に相当する。サムスン電子や現代のおひざ元である韓国は、中国向け輸出がGDPの15%に相当し、10年前の水準から倍増している。シンガポールの中国向け輸出はGDPの32%相当まで増加した。
貿易統計だけでは経済的依存度を完全に把握できない。例えば、2012年に韓国を訪れた旅行客の約4分の1は中国からだった。オーストラリアにおいては、他の顧客に売るコモディティの価格を押し上げるといった別の経路で、中国の需要が成長を促進している。
しかしアジアの貿易相手国の望み通りに中国が輸入を開放していたなら、中国の景気減速はより憂慮すべき問題となっていただろう。中国の経済規模がほぼ4倍に拡大した過去10年間で、近隣諸国のうち経済規模で上位9カ国からの中国への輸出は、輸出総額の17%から23%にしか増えていない。フィリピンとインドネシアでは、GDPに占める中国向け輸出の比率を見る限り、中国の奇跡的な成長はほとんど影響を及ぼしていない。
好況時には、中国が市場開放を遅らせていることが不満の種となったが、景気が減速するとむしろ幾分かの安心感をもたらす可能性がある。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(ロイター)>
杜父魚文庫
13126 中国 韓国に”ない袖はふれぬ” 古澤襄

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