13197 日本の株価に依然強気 年末までに再度上昇予想  古澤襄

米ウォール・ストリート・ジャーナルはKANA INAGAKI氏による「日本経済の先行き見通しは堅調で、政治的決意も強い。このため、株価が年末までに再び上昇し始めると信じる投資家が少なくない」とする論評を掲げた。
これには「今後数カ月間は紆余曲折をたどる公算が大きい」との前提がついている。
現在の世界市場はグローバルなリスクが再浮上している。最近の株価下落は①米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和措置を縮小するとの観測②中国の弱い経済統計を受けた動きで現在、中国の金融システムの緊張が浮上し、世界中の市場が神経質になっている・・・の二つの要因にあるとした。
だが、乱高下したトレーディングの間に失った投資家を取り戻すため、今後節目になるのが7月下旬の参院選だと米ウォール・ストリート・ジャーナルは指摘する。
この選挙で安倍晋三首相が権力基盤を強固にし、大幅な法人税引き下げや労働法改正といった政治的に微妙な改革に取り組む
ことによって状況は変化する。第2四半期の企業業績が7月末ごろに発表されれば株価は上昇するかもしれない。
その一方で懸念すべきは中国の経済・金融システムが予測不能な状況に突入する”中国リスク”である。中国など外部要因が悪化すれば日本の株価は打撃を受けることも考えておかねばならない。
<日本の株式市場は、最も熱心なブル(強気筋)をも失望させるという悪評がある。日経平均株価が6月、5月22日に付けた数年ぶりの高値から20%下落した時、投資家たちは、最近の急騰局面はもう一つの「偽りの夜明け」だったのかといぶかしんだ。
しかし日本経済の先行き見通しは堅調で、政治的決意も強い。このため、株価が年末までに再び上昇し始めると信じる投資家が少なくない。
ただし、今後数カ月間は紆余曲折をたどる公算が大きい。トレーダーたちが政策期待を超えて、経済成長と企業業績の具体的な兆候を見極めようとするためだ。

週末6月28日、日経平均株価は5月22日につけた5年ぶりの高値を12%下回る水準だった。それまで日本の株価は着実に上昇し、昨年11月半ばから80%も上昇していた。最近の売りにもかかわらず、日経平均株価は依然として前年比32%高で、第2四半期(4−6月)は10%高となっており、日本はアジアで有数の株価パフォーマンスを記録。
5月は1日の変動幅が大きくなり、1000円以上浮動した日もあった。少なくとも200円の上下動は6月の大半の時期も続いた。
この結果、日経平均株価の歴史的ボラティリティー(過去60日間の株価変動の大きさを示す)は6月には37%に達した。同株価は現在1万3700円前後で、37%という変動率は、向こう1年間にわたって5069円上昇ないし下落する可能性を示唆している。この変動率は2011年3月11日の東日本大震災と福島第1原発事故後に見られた変動率よりも高い。日経QUICKによれば、ダウ工業株30種平均株価指数の60日間のボラティリティーは10%をわずかに上回る水準だった。
■円安は日本の自動車メーカーの増益に寄与
市場の環境も変わった。グローバルなリスクが再浮上したためだ。5月23日の日経平均の7.3%下落を例にとろう。この下落は、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和措置を縮小するとの観測と中国の弱い経済統計を受けた動きだった。現在、中国の金融システムの緊張が浮上し、世界中の市場が神経質になっている。
多くのアナリストは、最近の売りは未曽有のペースの上昇を受けた自然な調整局面だとみている。
強気センチメントの兆候の一つとして、急落の後でさえ日経平均株価のプット(売り)オプションに対する需要がそれほど強くなかった点をソシエテ・ジェネラル(香港)の株式デリバティブストラテジスト、ジャン・デニス・アードン氏は指摘している。プットオプションは、特定の時期に特定の価格で株式を売却する権利を投資家に与えるもので、通常、株価下落に乗じようとする際に活用される。
同氏は「5月23日の大変動の後、多くのプレーヤーがポジションを閉めていた」と述べた。ただし「現在の水準では、再び適切なエントリーポジションの時期だと考える投資家が少なくない」と語った。
同氏によれば、顧客は1万5000円で3カ月物の日経コール(買い)オプションを購入していると言う。コールオプションは、特定の時期に特定の価格で株式を購入できる権利だ。これは、9月までに現在の水準から株価が上昇すれば利益が得られる、と投資家が考えていることを意味する。
乱高下したトレーディングの間に失った投資家を取り戻すため、今後節目になるのが7月下旬の参院選だ。この選挙は安倍晋三首相にとって権力基盤を強固にし、大幅な法人税引き下げや労働法改正といった政治的に微妙な改革に取り組む際に決定的に重要な要素になる。
■日本はQ2にアジアで有数の株価パフォーマンスを記録
オランダ資金運用会社ロベコで11億ドルのアジア太平洋株式ファンドを運用しているMichiel van Voorst氏は、5月初めに日本株を40%から36%に減らしたと述べた。同氏は、総じて日本の株式市場に前向きだが、日本株に追加投資するのは安倍氏の決意を見極めてからにしたいと述べている。
同氏は「われわれは構造改革面で明確な前進があるかどうか見極めたい」と述べた。同氏は「われわれは正しい方向の中で若干のうわさを耳にしているが、具体的な政策提案はあまり多くない」と語った。
日本生命の調査機関であるニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は、5月の売りは投資家がアベノミクスにうんざりしていることを示唆するとし、彼らは日本以外に関心を示していると語った。
矢嶋氏は「日本の株式がここから新たな高値を追おうとするのは難しい。安倍氏がどんなに努力しても、中国など外部要因が悪化すれば日本の株価は打撃を受けるだろう」と語った。
それでもなお、第2四半期の企業業績が7月末ごろに発表されれば株価は上昇する、とトレーダーたちは予想している。業績は良好との予測が広まっている。海外で稼いだ利益は、本国に送金する際に円安に伴って、その価値が膨らむためだ。ドルは今年、対円で14%上昇した。
約9400億円(95億ドル)を運用している損保ジャパン日本興和アセットマネジメントのシニア・インベストメントマネージャー、菅原繁男氏は「現在まで市場はアベノミクス期待で動いていたが、ここからは政策期待ではなく企業収益によって決まる市場になるだろう」と述べた。
市場を動かす要因のシフトの一環として、取引パターンもまた変化しつつある。最近まで、株式売買は、日経平均など株式指数を追跡する戦略を行使する外国ヘッジファンドの大きな動きによって支配されてきた。しかし、一部ファンドマネジャーによれば、東京市場はここからは「株式ピッカーズ市場(企業のパフォーマンスをみて売買する市場)」になるだろうという。これは収益パフォーマンスやバランスシートなど企業の特殊要因を見てポートフォリオを組む投資マネジャーにとって有利な機会になる。
米プルデンシャル・フィナンシャルの子会社プルデンシャル・インベンストメント・マネジメント・ジャパン株式運用部長の篠原慎太郎氏は「いままでファンダメンタルズから切り離された動きがあったが、今後は株価が企業利益との関係でどう動くか、もっと現実的に見極めようとするだろう」と予想している。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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