13258 書評「国家の命運――安倍政権、奇跡のドキュメント」  宮崎正弘

日本沈没寸前、危機を回避した奇跡はこうして起こった。ミラクル内閣の初動をドキュメント風に追いながら安倍政治の真骨頂を追求。
<<小川栄太郎『国家の命運――安倍政権、奇跡のドキュメント』(幻冬舎)>>
前作『約束の日』は、それこそタイミング抜群、著者の好む用語を使えば、「奇跡」的な時宜を得た。安倍政権は、評者(宮崎)が当初から指摘したように、2013年九月の段階で自民党総裁選での「泡沫候補」だった。誰もが石破か石原だろうと予測していた。谷垣では勝てないから自民党総裁選は、それなりに注目されていた。
舞台裏では安倍擁立、安倍政権実現に三宅久之らが動いた。だが、その時点で安倍激励集会は、その場にいた金美齢女史の証言によれば、
「じつに寂しい集会でした」。
日本の政治評論家が誰も書かないから、もう一回指摘しておきたいが、安倍の奇跡のカムバックは「中国」ファクターが第一義である。
もし2013年9月11日に野田内閣が尖閣諸島の国有化宣言をしなかったら、直後からの反日暴動は起きなかった。中国各地での理不尽な反日暴力は、親中派企業のパナソニック、イオン、平和堂を襲撃し放火し、そして選挙民はこれほどの屈辱を前に中国に何も言えない民主党を完全に見限った。日本には強いリーダーが必要である。それは安倍しかしないではないか、と判断した。
安倍晋三、奇跡のカムバック劇と自民党の大勝。そしてアベノミクスの発動、円安、株価急上昇という明るさが戻り、逆に中国は真っ暗となった。韓国経済が沈没寸前となった。
これは奇跡というより、神風ではなかろうか。
さて本書の書き出しはこうである。
 「安倍晋三は、今や、日本の国力そのものである」
 「安倍は一度、地獄をみてきた男である」
安倍に無限の共鳴をする著者の歴史観は次の言葉に簡潔に集約されている。
 「日本の底なし井戸は、世界でもたぐいまれなほど深く、重層的だ。世界で唯一有色人種として近代化に成功した明治維新も、大東亜戦争での驚異の闘いぶりも、奇跡の戦後復興も、全てこの深さそのものに由来する。我々は何としてもその深さを取り戻さねばならない。その第一歩は、歴史認識であり、靖国参拝であり、それを通じて、日本人の正しい歴史と魂とを取り戻すことだ」
そうだ。歴史認識というのは大和魂の回復である。武士道の復興である。内閣参与の藤井聡教授が唱える「強靭化」なる標語も「精神の強靭化」が筆頭になければならない。
アベノミクスというのは経済の強靭化であり、精神の強靭化のプログラムはまだ概念的にしか提示されていない。
当面は参院選挙に大勝する必要があり、経済優先を掲げた安倍は、市場の信用と勝ち取る作戦に出た。『三本の矢』とは金融、財政、そして成長戦略である。
しかし同時並行的に安倍は「皇位継承の男系男子原則を明確化し」、教育再生を掲げた。憲法96条改正を正面に据えた。
また輻輳して外交面では、したたかに中国包囲網外交を展開して、アジアの信頼をかちとった。
「安倍は南シナ海が北京の海になりつつあることを警告し、尖閣への中国の圧力に、日本は屈しないとした」
対米重視は歴然としている。習近平に8時間も割いて厚遇したオバマは、安倍の訪米にワーキングランチを挟んで一時間45分という冷遇ぶりだったが、誇りをもって、卑屈にはならずに日米会談を済ませた。
「安全保障を依存している国と対等であることは、残念ながらあり得ない。日米関係の現状では、信頼を勝ち得なければならないのは日本のほうだ」という著者は次の言葉を続ける。
「しかし卑屈になってはならない。自立に向けた世界構想を持つことは出来る。その構想の説得力が(中略)日本の自主防衛への道を舗装することになる」。
安倍政権誕生からの急激に日本の変化をドキュメント風に捉え直しての力作である。
杜父魚文庫

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