本日七月七日、午後三時から陸上自衛隊第三十七聯隊(信太山駐屯)のレンジャー訓練帰還式に出席した。三ヶ月の苛酷な訓練を終えて七名が信太山に帰還してきた。
レンジャー訓練は、約三ヶ月にわたる体力訓練と戦闘訓練である。それは、極限状態にまで隊員を追い込んでいくもので、それに耐え抜いた隊員に、「自分はあらゆる困難に耐えられる」という確信を与えるものである。
特に、帰還直前の三日から五日間は、隊員は、眠らず食べることもできず、三十キロから五十キロの背嚢を背負い、銃を携行して山の中を行軍する。
第三十七聯隊のレンジャー行軍地は、奈良県の吉野と大峰の標高差千メートルを超える山岳地帯である。きわめて苛酷な場所だ。
隊員の体験談によると、倒れた振りをして水たまりの水を飲み、アマガエルを呑み込み蜘蛛を食べる、アマガエルは体力を甦らせてくれ、蜘蛛は甘くありがたかった。
この眠らず呑まず食わずの数日間の訓練を終えて部隊に帰還してくる隊員はどういう状態かというと、本日彼ら七人は、多くの仲間が拍手で出迎えるなかを、頬がこけて目を見開き、基地の門をくぐって来た。
彼らは、昨夜の雨一昨日の豪雨の中を山中で行軍してきたそのままの姿である。
重い荷物を背負い、小銃を携行しバズーカ砲かロケットランチャーのような武器を担ってふらふらになって進んでくる彼らが、最後の気力を振り絞っていることが分かるので、迎える者は目に涙をにじませる。
彼らは重装備のまま帰還式に臨み、連隊長が彼ら一人一人の首にレンジャー徽章をかけた。彼らが、三ヶ月の苛酷なレンジャー訓練から得た物はそれだけだ。
しかし、彼らの胸には誇りと不屈の闘魂が宿った。
私は、彼らに語りかけた。「君らの訓練は、いずれ祖国を救う、まことにご苦労さんだった、ありがとう」
政治に携わる者は、日本を支える者は、雨の山野で苦難に耐えてきた彼らなのだ、と謙虚に深思すべきである。
杜父魚文庫
13280 レンジャー訓練帰還式 西村眞悟

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