13357 米国追随で日本株は反騰継続、中国の景気減速懸念はね返す  古澤襄

<[東京 16日 ロイター]連休明けの東京市場は中国よりも米国に追随し、リスク選好ムードが続いている。
中国の4─6月期国内総生産(GDP)は減速したが、米株は最高値更新。懸念をはね返した米国市場の強さを好感し、ドル/円は上昇、日本株も戻りを試している。ただ、中国の信用収縮が強まれば実体経済にも大きな影響を与えるため、懸念が払しょくされたわけではない。薄商いのなかで高値を更新し続ける米株にも警戒感が出ている。
<日本への影響、中国はミクロ・米国はマクロ>
日本の2012年輸出額63兆7000億円のうち、中国向けは11兆5000億円(18%)、米国は11兆2000億円(17.5%)。輸出規模では中国の方がやや上回るが、日本経済に与える影響度としては米国経済の方がはるかに大きいというのがエコノミストのほぼ一致した見方だ。
中国への輸出品目では電子部品や自動車部品など、現地生産のためのパーツが多い。その仕向地は欧州や米国。中国需要が多少鈍化しても米国経済が堅調であれば日本からの輸出は下支えられる。
また、中国政府が政策スタンスを経済成長から構造改革に舵を切ったとの見方はほぼ織り込まれつつある。中国の第2・四半期GDP伸び率は前年同期比7.5%と、第1・四半期の同7.7%から鈍化し、景気減速が鮮明になったが、マーケットではネガティブな反応は乏しかった。「多少の景気減速は仕方がない。むしろGDP伸び率が市場予想に一致したことで過度な懸念が後退した」(国内証券)という。むしろ、過度な需要が減退し、商品価格が低下すれば資源国にはマイナスだが、日本にはプラスとの見方もある。
一方、米国は6月の小売売上高は市場予想をやや下回ったものの、ニューヨーク州製造業業況指数は市場予想を上回るなど堅調なマクロ指標が続いている。米企業決算発表でも序盤のアルコア、米JPモルガン・チェース、、シティグループなどが市場予想を上回る内容となった。
バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長が10日、緩和継続を強調したことで金融緩和の早期縮小への警戒感も後退。米ダウ.DJIとS&P500.SPXは3営業日連続で過去最高値を更新した。
SMBC日興証券チーフエコノミストの牧野潤一氏は、中国経済の日本経済への影響はミクロ面に出る一方、米国経済の影響はマクロ面に出ると指摘する。「中国経済の減速は資源価格の下落を通じて商社や建設機械など一部業種には影響が出るが、最終商品の需要先としては依然小さいため、あくまでミクロ面への影響だ。一方、米国は自動車など最終商品の最大の需要先であるほか、同国の経済改善は円安要因でもあることから、マクロ面にダブルで効果がある」と話している。
<薄商いの中で高値更新の米国株>
ただ、16日の上海総合指数.SSECが下げ幅を広げる場面では、日本株も上値が重くなるなど、マーケットは中国動向には依然神経質だ。GDPの約6割の規模にまで拡大したシャドー・バンキング(影の銀行)を縮小する際には、中小企業や中小金融の破たんが起きる可能性もあるほか、多額な融資を受けていた地方政府にも影響が出るとみられている。
「米国のサブプライム問題が実体経済に大きなダメージを与えたように、信用収縮がさらに加速すれば、経済に悪影響を及ぼしかねない。シャドーバンキングに替わる資金供給ルートを整備できるかが一つのカギだろう」と楽天経済研究所シニア・マーケットアナリストの土信田雅之氏は指摘する。
また米国も経済は堅調だが、連日高値更新を繰り返す株価には高値警戒感も出ている。ダウの25日移動平均線とのかい離率は2.6%(15日)と大きくはないが、15日のニューヨーク証券取引所、ナスダック、NYSE MKTの3市場の出来高は48億9000万株と、今年の平均の64億株を下回り、終日取引が行われた日としては年初来の低さとなった。薄商いの中での高値更新は危険な兆候だ。
市場では「米国のISM製造業景気指数が弱いのは外需が低迷しているためだ。米国は内需が強いが外需は弱い。世界経済と無縁というわけではない。また内需も金利や原油価格の上昇で懸念が出てきた。経済が弱いが故の超金融緩和であり、楽観が行き過ぎることには警戒すべきだ」(国内投信エコノミスト)との声も出ている。(ロイター)>
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