13361 アメリカは尖閣問題に干渉するな  古森義久

米中戦略・経済対話の総合評価を続けます。中国側が言いたい放題、日本にとっては当然、気になる尖閣問題ではアメリカに不干渉を求めたとのことです。
<<米中戦略・経済対話で米国を見下ろす中国 人権問題批判に悪びれもせず米国に説教>>
ところがここでも中国側は悪びれることなく、堂々と反論してきた。チベットや新疆では人権状況は改善されている、と宣言したのだった。そして各国に は独自の文化や歴史があるとして、他国の内政に干渉すべきではないと反論した。そのうえで「米国こそ人権改善に努めるべきだ」(楊国務委員)とまで述べた という。米国内の人種差別や違法移民処遇を指すのかもしれないが、民主主義と人権尊重を標榜する米国もすっかり形なしである。
■「新型の大国関係」を何度も強調した中国
さらに米国側は尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海での中国の威圧的な海洋戦略に言及し、国連海洋法や航行の自由という国際規範を挙げて、抑制を求めたという。
しかし中国側は海洋・領有権問題については「主権と領土保全」を強調し、アメリカの不干渉を求めた。領有権問題は当事国同士で対処するという中国の年来の基本態度をも繰り返したという。
そのうえで楊国務委員は「同意はできなということを同意しよう」という英語の表現を持ち出して、米中両国間には決して一致できないミゾがあることを認め、相手国のあり方に文句をつけることは止めようとまで主張したのだった。
米中両国は今回の対話で首脳間のホットラインの設置には合意したものの、安保や政治ではこれほどのギャップをさらけ出したのである。
中国側がこの対話の全体のプロセスを通じて何人もの代表が何度も強調したのは、米中間の「新型の大国関係」だった。この言葉は米中両国でアジアや 世界を主導するという思いを込めた、中国側の政策用語だと言える。オバマ・習会談の際にも中国側からしきりと提起された言葉だった。
しかし今回の対話ではアメリカ側はこの言葉を一度も使わなかったという。米中関係のあり方への思惑の違いを鮮明に裏づける現象だったと言える。米中関係はまだまだ曲折が予測されるということでもあろう。
日本としては、尖閣諸島の問題では中国は米国の意向にかかわらず、これまでの挑発的な軍事がらみの攻勢を緩める、というような気配はツユほども見せなかった点に留意しておくべきである。(完)
杜父魚文庫

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