<太平洋戦争中に日本に徴用された韓国人労働者たちの遺族が三菱重工業を訴えた裁判で、プサンの裁判所は「個人の請求権は消滅していない」として、損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡しました。
韓国の裁判所が徴用を巡って日本企業に賠償を命じたのは2度目で、この問題は日韓の新たな外交摩擦につながる可能性があります。
この裁判は、1944年に三菱重工業に徴用され、終戦まで広島にある工場などで働かされた韓国人5人に関して、「強制労働させられた」として遺族が損害賠償を求めているものです。
韓国の最高裁判所が去年「個人の請求権は消滅していない」とする初めての判断を示したことを受けて、プサン高等裁判所に差し戻されていました。
高等裁判所は30日、原告側の主張を大筋で認め、三菱重工業に対して元労働者1人につき8000万ウォン、日本円で700万円余りの損害賠償を命じる判決を言い渡しました。
訴えている遺族の1人、パク・チェフンさんは「親が生きている間に判決が出ていたらよかったですが、皆亡くなっており、うれしくも複雑な気持ちです」と話していました。
韓国の裁判所が、徴用を巡って日本企業に損害賠償を支払うよう命じたのは、今月10日の新日鉄住金への判決に続いて2度目です。
日本は、1965年に韓国と国交を樹立した際に請求権の問題は完全に解決されたという立場で、この問題は日韓の新たな外交摩擦につながる可能性があります。
■三菱重工「再上告の手続き進める」
三菱重工業は「判決の詳細は未確認だが、徴用工などへの補償を含む日韓両国間および国民間の請求権に関する問題は、国家間の正式合意により完全かつ最終的に解決したものと理解している。これらを否定する判決は不当な判決と言わざるをえず、誠に遺憾である。速やかに韓国最高裁判所への再上告手続きを進めていきたい」とするコメントを出しました。
■官房長官「解決済みで容認できない」
菅官房長官は、午後の記者会見で、「日韓間の財産請求権の問題は、日韓請求権・経済協力協定によって、完全に、そして最終的に解決済みだ。仮に、これと相いれない判決であれば、わが国としては容認することはできない。韓国政府も本件については解決済みという立場だと承知している。わが国の立場は一貫しているので、引き続き、外交ルートを通じて韓国側に伝えていくことが大事だ」と述べました。
また、菅官房長官は、「新日鉄から、本日、韓国大法院への再上告の手続きを完了したと連絡を受けている」と述べ、新日鉄住金が、損害賠償を命じたソウル高等裁判所の判決を不服として上告したことを明らかにしました。
さらに、菅官房長官は、記者団が、「韓国政府も日本政府と同じように解決済みという認識であると考えているか」と質問したのに対し、「かつてはそういう立場であり、現在も変わっていないと思う」と述べました。(NHK)>
杜父魚文庫
13502 韓国 また日本企業に賠償命令 古澤襄

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