ケビン・ドーク教授と古森義久の対談です。雑誌VOICE8月号からです。中国や韓国の日本叩きの真実をみるべきだという主張です。
■「日本叩きの競争」が展開されている
古森 法輪功への弾圧を見ても、ドーク氏のいう通りです。一方で、韓国の靖国批判は、中国の批判とは多少、質が異なります。中国の「反 日」の背後には、共産党の政策的な意思統一が見られる。私はつねづね、「中国の『反日』は水道の蛇口だ」といっています。政府が蛇口をひねれば、自在に 「反日」の強弱をコントロールできる。少し加減を間違えると国内暴動に転化するので、行きすぎた場合は蛇口を締めることになります。
韓国は独裁国家の中国とは異なり、政府の統制が効きづらく、民衆のアクシデントが発生しやすい。靖国参拝に対する「反日」も、情緒的である反面、政策的な一貫性は少ないといえます。
ドーク 明らかに、韓国の場合は中国と異なります。韓国では宗教の自由が保障されている。それでもなお、日本の靖国神社の参拝に反発する理由は複雑です。
第一に、韓国では国民に占める宗教の位置付けが大きい。半数以上の国民が積極的に宗教活動を実践しており、宗教については日本よりも真剣に受け止めているところがあります。神道に基づく靖国参拝を仏教やキリスト教に対する脅威、いわば聖像破壊【ルビ入る=イコノクラスム】として見ている。
しかしキリスト教徒、とくにカトリック教徒が、神道を敵視する必要はありません。ロー マ教皇庁が戦前の一九三六年、日本の信徒に向けて「カトリック教徒は自由に参拝してよい」という通達を出しているのですから。韓国の人々は、ローマ教皇庁 がこうした見解を出していることすら知らないでしょう。日本のカトリック教徒でも知らない人が多い。宗教に基づくと思われる靖国批判には、このように欠落 した部分があります。
第二に、韓国が靖国参拝に反対する政治的な理由があります。それは、朝鮮半島が二つに 分断されていることから生じている。北朝鮮はご存じのように共産主義国で、いわゆる「日本帝国主義」に抵抗運動を起こした人びとが設立した国です。
一方、 韓国は李承晩というキリスト教徒によって成立した反共産主義国です。この「反共」という一点をとってみても、韓国にはそもそも日本に対する抵抗心や反発心 は薄かった、といわざるをえない。それを負い目に感じている韓国人もいます。
この歴史的起源から派生して現在、南北朝鮮のあいだで「日本叩きの競争」が展開されています。日本統治時代の歴史に反発し「反日」を叫ぶことで、どちらが朝鮮民族のアイデンティティに忠実かを競っているのです。
古森 靖国参拝のような日本の慣習に対する非難は、多分に政治的に加工されたものです。草の根から湧いてくる、英語でいうgenuine(真の)またはspontaneous(自発的)感情ではまったくない。
■ボストン・マラソン事件の容疑者埋葬との違い
古森 安倍総理は二〇一三年五月、アメリカの外交誌『フォーリン・アフェアーズ』のインタビューで、靖国参拝をやめれば中韓との歴史問 題は終わるのではないか、との問いに対し、これを明確に否定しました。ドーク氏の見解を引用して「アーリントン国立墓地には南北戦争で戦死した南軍兵士が眠っているが、アーリントン墓地に参ることは、(南軍の掲げた)奴隷制度を支持することを意味しているわけではない」と述べています。靖国神社に行くのはA級戦犯の行為をすべて支持することではない、ということです。
ドーク この問題について最も基本的なことは、人間が死者に対してどのような態度を取るか、という点に尽きます。ほとんどの民主主義国において、死者の生前の行為は、その霊を追悼するうえで妨げになりません。
最近の例を挙げると、二〇一三年四月にボストン・マラソンで爆弾事件が起き、二人の容疑者のうちの一人(タメルラン・ツァルナエフ)が逃走し、銃撃戦で死亡しました。容疑者の死体を埋葬するに際して、あらゆる墓地が引き受けを断り、最終的 に私が住んでいるバージニア州の墓地が埋葬を受け入れました。なお一部に反対がありましたが、バージニア州の住民の圧倒的多数は「容疑者が生前に何をしようと、死者の霊には尊敬の念を払い、埋葬すべきだ」という意見でした。
これと対照的なのが、中国のような一党独裁国家における死者の扱いです。毛沢東のような人物は天安門広場に記念堂をつくって顕彰する反面、体制に反攻した者はその墓を暴き、遺骨を川に投げ込みさえする。
古森 かつて中国に、汪兆銘(中華民国首相)という対日協力者とされた政治リーダーがいました。死後、汪兆銘の墓は爆破され、彼の銅像 の前を通る者は「唾を吐きかけよ」といわれてその通りにした。この感覚は、日本やアメリカをはじめとする現代の国際社会とは相容れないものです。魂の尊厳を無視し、生前に遡って死者に鞭打つという「異端」の考えを押しつけられている。
中国は、仮に日本が靖国神社からA級戦犯を分祀しても、次はB級戦犯、C級戦犯の排除を求めてくる。たとえ神社自体を廃止しても、ほかの所に言いがかりをつけてくるでしょう。「互いの主張を足して二で割れば解決策が出る」という考えは通用しません。相手に押し切られるだけです。日本が日本であるかぎり、中国は文句をつけてくるものと考えるべきです。
同様に、慰安婦問題についても、黙っていれば解決する、ということはありません。在米の中国・韓国系組織にとって、「反日」は日本に対して一貫して続けてきたキャンペーンです。
アメリカに拠点を置く中国系団体「世界抗日戦争史実維護連合会」は、下院議員のマイク・ホンダを使い、慰安婦問題で対日非難を繰り返させました。マイク・ホンダはアメリカで慰安婦決議が通る二〇〇七年よりはるか前の二〇〇〇年、議員に当選して「世界抗日戦争史実維護連合会」から多額の献金を受けました。そして〇六年までのあいだ、繰り返し慰安婦決議案を提出していた。したがって「安倍政権が慰安婦問題を再燃させた」という議論は、事実関係が間違っています。
もう一つは日本自身の問題です。慰安婦問題をめぐってアメリカ人と議論になり、私が「慰安婦をsex slave(性奴隷)と呼び、日本軍が強制的に連行したという根拠は何か」と聞くと、相手は「歴史家がそう記している」というので、名前を尋ねると答えない。さらに問うと、最後は「河野談話(一九九三年、当時の河野洋平官房長官が慰安所設置に日本軍が関与したと認めた談話)に書いてある」という。あのような嘘の談話をいつまでも乱用されないように、政府見解を正しく示すべきです。(つづく)
杜父魚文庫
13625 韓国の日本叩きは自分たちへの負い目から 古森義久
古森義久
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