13665 エジプト騒乱阻止できず西側に無力感  古澤襄

■支援凍結が視野に
<[パリ 15日 ロイター]エジプト暫定政府が「ムスリム同胞団」などモルシ前大統領派デモ隊を強制排除するのを阻止できなかった西側諸国は、暫定政府を厳しく非難するとともに、混迷の度合いが深まるエジプトへの影響力を今後どのように高めていくのか模索し始めている。
米国と欧州連合(EU)は、エジプト暫定政府の治安部隊と「ムスリム同胞団」のにらみ合いを平和的、政治的に解決しようと、最後の最後まで努力を続けていた。
英連立政権の一角をなす自由民主党の有力議員、メンジーズ・キャンベル氏は「ほかにどのようなやりようがあったというのか。西側の外交の失敗というよりも、無力さを示す出来事だった」と述べた。同氏は、ロイターとの電話インタビューで「どんな社会を望んでいるのか、根本の部分で溝があった」との見方を示している。

西側諸国は板挟みになっている。エジプトに民主主義を根付かせたい一方で、西側にとって、スエズ運河を要するエジプトの安定回復も極めて重要だからだ。
シンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)の中東担当ディレクター、ダニエル・レビー氏は「西側は支援凍結も視野に入れる必要がある。財界など、軍部以外の政治勢力に対して、彼らが代償を支払うことになると知らしめるべきだ」と述べた。
エジプトと戦略的な同盟関係にある米国は、暴力行為を強く非難。自制と政治的な解決を求めた。オバマ大統領は、エジプト暫定政府がとった行動を厳しく批判するとともに、15日にはエジプト軍との合同軍事演習を中止することを明らかにした。
年間13億ドルのエジプト向け軍事援助を縮小するよう、議会で圧力が高まるなか、オバマ大統領は、同国との関係について一段の措置を検討していると表明した。
<支援凍結以外の手立てなく>
英下院外交委員会のベテランメンバーでもある前述のキャンベル氏は「米国がとるべき正しい対応は、あすにでも支援を凍結すると、宣言することだ」としている。
オバマ米政権には支援の凍結以外、目ぼしい選択肢は残されていない。民主化運動「アラブの春」を支持したことで、保守的なペルシャ湾岸諸国との関係が冷え込んでいるうえ、オバマ大統領はそもそも、中東問題への介入に消極的とされるからだ。
欧米は、国際通貨基金(IMF)の対エジプト融資を停止することもできる。ただし、48億ドル相当の融資交渉は、モルシ前大統領時代にすでに決裂しており、暫定政府は、IMFからの融資獲得は最優先事項ではない、との姿勢を表明している。
共和党のマケイン上院議員らが先週、混乱解決に向けエジプトに乗り込んだが、軍に「外国の介入」に反対する世論をあおる材料を与えただけで逆効果に終わった。
<フランスは「内戦」を警戒>
欧州では、オランド仏大統領がデモ隊強制排除を強い表現で非難した。エジプト大使を個人的に呼びつけるという異例の措置をとり、武力行使を非難するとともに「抑圧の即時停止」を要求。「内戦を回避するため」あらゆる努力が必要と述べた。
フランス政府はまた、強制排除問題を国連で取り上げるとも表明したが、ロシアや中国が内政問題と主張すると予想され、安保理の措置は阻止される可能性が高い。
スウェーデンのビルト外相は、エジプト暫定政府が強硬姿勢を崩さないなか、EUがエジプトに影響力を及ぼすことができる可能性は極めて限られている、と話す。
外相はロイターに対して、EUはエジプト支援を再考する必要がある、と主張したが、経済制裁を実施したとしても、政治的な影響力は小さい、との見方を示した。
外相は、現時点ではEUの仲裁の余地はないと言い切る。「1、2週間前には可能だったことも、今や完全になくなった。厳しい抑圧の時期が続くだろう」と述べた。
ただ外相は、エジプトに背を向けることには反対という。「事態打開の可能性が出てきた時すぐに対応できるよう、対話の道筋は残しておくべき」と述べた。(ロイター)>
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