13668 ロイター記者がみたエジプトの混乱と流血  古澤襄

■エジプト現地ルポ:混乱と流血、銃弾の痕に芽生える「聖戦」
<[カイロ 14日 ロイター] – 催涙ガス、ブルドーザー、立ち上る炎──。治安部隊がモルシ前大統領支持派の強制排除に乗り出したエジプトでは、銃弾が飛び交い、血の海が広がっている。
1カ月半にわたって抗議を続ける数千人のデモ隊を排除しようと、エジプトの治安部隊がキャンプに到着したのは14日の夜明け後だった。
上空ではヘリコプターがごう音を響かせ、警官隊はデモ隊に向かって催涙ガスを噴射した。土のうや岩で作ったその場しのぎのバリケードは、ブルドーザーになぎ倒され、その内側ではデモ隊がパニックに陥っていた。
ロイターのヤスミン・サレハ記者は、治安部隊の攻撃が始まった直後にキャンプに到着した。コーランの言葉を口にする人や、「神よ、救いたまえ」と繰り返し叫ぶ人たちがいた。
警察車両から降り立った警官隊は、黒い服とマスクを着用し、その手には警棒と催涙弾が握られていた。彼らはテントを破壊し、火を放っていく。
「警官隊や兵士は、子どもにまで催涙ガスを噴射する。われわれは平和的なデモ隊で、武器は持ち合わせていない。銃も使っていない。石を投げただけだ。どれだけ頼んでも、彼らはデモ隊への銃撃を続けた」。こう語る学校教師(39)の頭からも血が流れ出ていた。
銃撃が始まって以降、死傷者が路上に倒れ、その周りには血だまりが広がっていた。デモ隊のキャンプは、かつて公園や子どもたちのための美術展覧会の会場として使われていたが、今では野戦病院と化していた。
路上に並ぶ7人の遺体のうち、十代とみられる1人は頭蓋骨を叩き割られ、後頭部から血が流れていた。
一方、首都カイロの別の場所では、ロイターのアブドル・モネイム・ハイカル記者がデモ隊の群集の中にいた際、銃弾が空気を切り裂く音を耳にした。
デモ隊は倒れ込むように地面に伏せた。ハイカル記者が見上げると、隣にいた男性の頭から血が噴き出していた。頭部に銃弾を受けたのだ。
治安部隊による攻撃が続く中、デモ隊が座り込みを続ける主要場所の西側入り口にはトム・フィン記者がいた。フィン記者は、負傷者を搬送するための救急車を治安部隊が妨害しているのを目撃した。
ピンク色のヒジャブをまとった女性は、兵士らの前で自分の身分証を振りかざし、「私は医者だ。通して欲しい」と声を荒げていた。彼女の後ろには50人前後のデモ隊が控えており、中には腕や顔から血を流している人もいた。
サイレンを響かせながら3台の救急車が到着し、男らは車の後部を叩きながら、「救急車を通してくれ」と叫んでいた。だが兵士らは救急車を追い返し、男らに催涙ガスを噴射した。
<野戦病院>
死傷者はモスクの近くにある建物の中の野戦病院に運ばれた。気温が高い内部は混とんとしており、大声をあげる人々でごった返していた。白い壁には血が飛び散っていた。
死者の多くは小さな部屋に安置され、頭部には白い包帯が巻かれていた。上半身をはだけた状態の12歳の男の子は銃弾が首を貫通していた。少年の母親は遺体を何度も揺らし、その胸に静かにキスをした。
フィン記者は29の遺体を確認した。ほとんどが20代の男性で、遺体の頭や首、そして胸に銃弾の痕があった。
モルシ前大統領の出身母体である「ムスリム同胞団」は数百人が死亡したとしているが、当局側はそれよりも小さい数を発表しており、正確な犠牲者の数は定かではない。取材中だったエジプト人記者と英テレビ局のカメラマンも死亡し、ロイターのカメラマンも脚に銃弾を受けて病院に搬送された。
ムスリム同胞団の支持者の1人は、聖戦の時が来たと語る。「われわれの血はこれほど安いのか。今こそジハードを実行する時だ。神は必ずや殺りく者に復讐する」。
デモ隊がいたキャンプからは、夕方までにほとんど人の姿が消えた。がれきの中にたたずむ1人の男性は「アラー以外に神はいない」と口にしている。静けさの中で、彼のむせび泣く声だけが響いていた。(ロイター)>
杜父魚文庫

コメント

  1. 山中 雅和 より:

     こんな事なら安定していたムバラク政権が
    続いていた方が良かった。ムルシ政権は今も
    選挙をすれば多分負けない。イスラエルにも
    相当の配慮を払っていた。が人事は適材適所
    とを欠き、一種の「お友達内閣」。けっして
    有能とはいえなかった。観光客も減り庶民の
    暮らしは困窮度を増した。米国は経済援助を
    継続する為、シシ国防相を中心とする今回の
    軍主導の政権転覆騒ぎをクーデターとは認め
    てはいない。
     しかし、余りにも露骨なな非民主的な政権
    樹立。米軍とエジプト軍の「合同軍事演習」
    は中止となる。仮に政権が軌道に乗った場合
    シシ国防相が故・ナセル大統領のようにこの
    国を治めるのだろうか?暫定大統領や首相や
    シシ国防相エルバラダイ前IAEAトップなどの
    副首相は一時的な姿であろう。結局少数派が
    政権を執るとすれば、シリアのアラウィー派
    アサド政権と余り変わらない。親イスラエル
    色もそこそこだったムバラク政権が倒された
    のでシシ政権は、イスラエルとは距離を置く
    かも?
     また、民主的選挙が再度繰り返されてイス
    ラム政権ができたとしても人事は幅広くなり
    親イスラエルが”護符”とはならないことが
    明白となった為やはりイスラエルとは距離を
    置くだろう。だが、イスラム同胞団はサウジ
    やカタールから資金や人員武器弾薬や訓練を
    受けてきたいわば、イスラム聖戦士が中心で
    シリアで言えば反政府勢力。ワッハーブ派系
    即ちスンニ派。ソ連占領時にアフガニスタン
    に派遣されたアルカイダと同系列だ。
     イランシリアトルコは、シーア派に近い。
    イラクのマリキ制権もサダムフセイン時代と
    違ってシーア派。パレスチナのアラブ人も。
    レバノンのヒズボラ、ナスララ師等も。・・
     サウジアラビアの王子がロシアのプーチン
    と交渉してロシアのパイプラインに配慮する
    からシリアの転覆を成就させてほしいと訴え
    た。・・が、プーチンは即座に断った。
     やり過ぎ自滅隠れ多極主義、イスラエルの
    リクードも米国ネオコンも中東を結束させて
    ひとつの大きな経済市場圏を形成して商売を
    大きくしたい。バーレーンやサウジも王族は
    スンニ派だが、ペルシャ湾岸はシーア派人口
    がスンニ派を凌駕している。中東地域はアル
    カイダやスンニ派を排除してシーア派で統合
    してゆく、そんなシナリオが米露の間で出来
    上がっている?最終的にイスラエルは潰す?
     「憎悪の的」となって、地域を結束させる
    イスラエルはかつては、英米の橋頭堡だった。
    しかし、今や憎まれ滅びる事がその使命なの
    かも?入植地拡大など最近やけに強硬好戦的。
     日本・イスラエル・英国を総称して”JIBs”
    ユーラシアグループのイアン・ブレマー氏は
    言った。ヒロシマ・ナガサキにはうんざりと
    イスラエル高官が言った。負け組ユダヤ縁?
    「一緒にしないでよ」と言いたくなる。・・
     
     

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