13715 英国の財政赤字、油断は禁物  古澤襄

<英国ではすべてが拡大傾向にある。奇妙なことに、すでに巨額となっている財政赤字も例外ではない。英国統計局(ONS)が21日発表した7月の統計では、英政府が財政黒字を計上するどころか、引き続き借り入れを必要としていることが明らかになった。景気こそ持ち直しているが、財政収支は依然としてオズボーン財務相の悩みの種になっている。
確かに、7月の財政赤字(公的部門純借入額)は6200万英ポンド(約95億円)と少額にとどまった。同統計は変動が大きく、今後修正される可能性もある。だが、英4-6月期の国内総生産(GDP)が前期比年率2.4%増と加速したことや、7月は例年、税収が増加するという事実を踏まえると、今回の数字は依然として期待外れだったといえる。
さらに、英中銀イングランド銀行が量的緩和の一環として買い入れた国債の利子収入を国庫に納付した影響で、借入額の数字は実際よりも低くなっている。この影響を除くと、7月の財政赤字は4億8800万英ポンドとなる。量的緩和は、ここ数年にわたって財政収支統計にゆがみをもたらしている多くの一時的要因の1つ。
実際、一時的要因を調整した公的部門借入額は増え続けており、減ってはいない。今年度のこれまでの借入額は、前年同期比16億英ポンド増の368億英ポンドとなっている。英政府の財政状況を監視する予算責任局(OBR)によれば、昨年の調整済み借入額は対国内総生産(GDP)比で7.8%を占めるなど、途方もなく大きかった。
希望は見通しが改善に向かっているということだ。4-7月の歳出は前年同期比4.3%増となったが、これは医療、教育、国際支援、地方政府向けの予算配分時期の変更によるところが大きい。
他方、英国・スイスの2国間の源泉徴収税協定に関する税金の送還分と、イングランド銀行の国庫納付を除く歳入は、3.2%増加した。これはOBRの通年予想値である2.4%を上回る。だが、統計では住宅市場が驚異的な回復を遂げたことも明らかになり、現在の景気回復を支えている基盤が盤石かどうかも懸念された。4-7月の不動産取引税による収入は前年同期比25%余りも増加し、通年予想値の12.2%を大幅に上回った。
結局のところ、直近の数字は経済全体に何ら影響を及ぼしていない。キャピタル・エコノミクスによれば、財政赤字の縮小傾向が2011年末に中断して以降、年間の調整済み借入額は1200億英ポンド前後にとどまっている。経済成長は恩恵をもたらすだろうが、英国の財政赤字が直ちに解消されることはなさそうだ。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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