[ワシントン/ベイルート 29日 ロイター]英議会は29日夜、シリアに対する軍事行動案を否決した。キャメロン首相は否決を受け、議会が化学兵器使用に関してシリアへの武力行使を望んでいないのは明らかだとし、議会の意向を無視しないと表明。今後は相応な行動をとっていく方針を示した。
シリアのアサド政権による化学兵器使用の確たる証拠が入手できない中で、最強の盟友である英国の参加が期待できなくなったことは、オバマ米大統領にとって大きな打撃。ホワイトハウスは、英国とは協議を続けるとしつつ、オバマ大統領は米国の利益を踏まえて対応を決定する、との声明を発表した。
ホワイトハウスのヘイデン報道官は声明のなかで「今夜の英議会の採決結果は認識している。米国は英政府と協議を続ける」としている。
報道官はまた「オバマ米大統領は、何が米国にとって最大の利益なのかという点を踏まえて決断を下す。大統領は、米国にとって中核的な利益がかかっていると認識しており、化学兵器使用に関する国際的な規範に違反する諸国は、その責任を負うべきだと考えている」と述べた。
オバマ政権高官は同日午後、シリア情勢について米議会指導部に説明を行う。ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官のほか、ライス大統領補佐官(国家安全保障担当)やクラッパー国家情報長官らがブリーフィングを行っている。
キャメロン英首相は29日議会で「(シリアへの軍事介入に)国連安全保障理事会で圧倒的な反対があれば、(英国が軍事行動を)開始することは考えられない」と言明した。また英政府は、国連安全保障理事会の決議が得られなくても、シリアへの軍事攻撃に踏み切ることが合法的であることを示す法的見解を発表していたが、結局、議会の了解をとることができなかった。
ハモンド英国防相はBBCテレビの番組で「中東に介入することについて、深い疑念があることを理解する」と述べた。
英国の軍事介入参加見送りに米国は失望するだろうが「英国が不参加でも、(軍事)行動は実施される」との見方を示した。
国連調査団による現地調査について潘基文国連事務総長は、調査団は30日まで査察を続け、31日午前までにシリアを出国すると述べた。
国連安全保障理事会の常任理事国は29日午後(日本時間30日未明)から、シリアへの対応について再度協議したが、進展はなかったもよう。
協議はロシアの提案により開催され、1時間弱続いた。協議終了後、各国の代表は記者団の質問に答えなかった。ある外交筋は、ロシアが再協議を提案した理由が不明とし、協議で新たな提案などは出なかったと語った。
「さらなるP5(安保理常任理事国)会議の予定はないが、今後変わる可能性がある」という。(ロイター)>
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