13805 「これぞ温泉」の硫黄温泉  古澤襄

骨髄腫の告知を受けた時には「余命三年」と覚悟した。それが間もなく十二年目を迎える。月に一度は採血・検尿をせねばならぬ病人の身だが、そと目には健常者と変わらない。制ガン剤もまだ服用していない。日本酒もガンガン飲んでいる。
ただ、この十数年必ず励行してきたことがある。時間があれば一泊でも温泉場に通い、温泉浴をしてきた。一日に二回、温泉に身を沈めて、温泉から出る時には上がり湯を浴びない。そんなに温泉にばかり入って”湯当たり”をしないか、と心配してくれる人もいるが、温泉浴こそが長寿の秘訣と信じている。
奥羽山系には温泉宿が多い。那須火山帯が南から北に通っている。泉質は「単純温泉」で人の身体に優しい。無色透明、無味無臭の泉質だが、濃度が低いので長湯をしても湯疲れをしたことがない。
日本全国どこにでもある泉質なのだが、「単純温泉」ばかり入っていると、もう少し濃度が高い温泉に入りたいと欲が出ている。ひとつは箱根温泉郷で味わった卵が腐ったような臭いがする「硫黄温泉」である。硫化水素ガスが強烈なので、温泉卵が黒ずんでいる。
その願いがこんど実現した。母方の祖父の生家がある信州の上山田温泉で念願の「硫黄温泉」に入ることが出来た。まさに「これぞ温泉」という思いである。
温泉糟の扉を開くと、むせ返るような卵が腐ったような独特の臭いに包まれた。湯はやや黄色みを帯びているが、皮膚に当たる感触は、「単純温泉」と違って強烈である。
薬用効果が高く、高血圧、動脈硬化、糖尿病、便秘、婦人疾患、皮膚疾患、外傷 などに効くという。ただ長湯をしていると、刺激が強いので湯あたりや皮膚炎を起こすと注意された。
温泉慣れした身体なので、注意書きを無視して二回も長湯をした。この「硫黄温泉」は病みつきになりそうである。年内にもう一度、行きたいと早くも心は上山田温泉に飛んでいる。
もうひとつ、どうしても行きたい温泉がある。放射能騒ぎが絶えない日本だが、秋田県の玉川温泉郷は「放射能温泉」で有名である。微量の放射能は、免疫細胞の活性化に効果があるといわれている。
無色透明の湯は、ラジウム泉、ラドン泉、トリウム泉などがあって、日本には秋田県の玉川温泉郷しかない。台湾旅行をした時に北投温泉が「放射能温泉」で有名だったが、行きそびれている。
皮膚病、婦人疾患、痛風、高血圧、高尿酸血症、糖尿病、循環器障害などに効くというが、玉川温泉郷の人気は高く、予約は二年前にしなければならない。骨髄腫には効くと狙いを定めて久しいが、温泉宿の予約がとれなければ、岩盤浴でもいいから行ってみたい。
杜父魚文庫

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