13834 書評『日本のロケット 真実の軌跡』  宮崎正弘

戦後、日本のロケット開発しは書き換えられている。つねにアメリカの圧力が存在した事実を淡々と記述。
<<宮川輝子『日本のロケット 真実の軌跡』(ルネッサンス・アイ、発売=白順社)>>
著者は日本のロケット開発で有名な宮川行雄氏(元法政大学教授)夫人。なぜ、この本を書かれたのか、不思議に思った。読んでみて納得、戦後の日本のロケット開発史は、作為的な物語であり、なぜか糸川英夫の物語に書き換えられて、戦前からの『開発前史』がすっぽりと欠落しているからである。
本書ではロケットの歴史を振り返りつつ、大東亜戦争時代の日本の技術水準の高さに触れ、宇宙開発の黎明期を遡及する。こうした真実の歴史が途中から作り替えられた、その理由は奈辺にあるかを、夫の開発研究をそばでみていた者として、書かずにはおられなかったというわけである。貴重な技術史の裏側を垣間見ることが出来る。
アメリカの圧力は、しかしながら現在も続行中である。H2ロケットは純国産である。
これが途中から、脅威視するアメリカの巧妙な政治的罠によってもぎ取られた。いまのTTP加盟への露骨な圧力、小泉時代の郵政民営化がすべてアメリカの政治的圧力であったように、ロケット開発を横から政治的に成果を掠め取り、妨害し、日本の開発を遅らせてのはアメリカである。
「1990年にアメリカは包括貿易法『スーパー301』を持ち出してくるが、このとき、標的にしてきたのが、スパコン、木材、そして人工衛星だった」
つまりスパコンも木材も陽動作戦のおとり、本当の狙いは日本のロケット開発を遅らせることにあった。日米関係の裏面に触れる技術開発史の読みものである。
杜父魚文庫

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