五日からロシアのサンクトペテルブルクで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議は、米国が単独でも介入する構えをみせている対シリア軍事行動がテーマとして論議される公算が強い。
ロシアのプーチン大統領は四日、議長国として同会合でシリア情勢を討議するよう提案することを明らかにした。
20カ国・地域(G20)首脳会議は二日間行われるが、経済問題の議論よりシリア軍事介入が中心テーマにでもなれば、米国にとっては好ましいことではない。同会議そのものは、国連の安全保障理事会の代わりになるものではないが、国際的な批判に曝されながら、軍事行動に走る米国の状況を浮き彫りにする場になりかねない。
<【サンクトペテルブルク=遠藤良介】ロシアのプーチン大統領は、5日に西部サンクトペテルブルクで開会する20カ国・地域(G20)首脳会合で、予定されている経済問題のほか、シリア情勢を討議するよう議長として提案する考えを示した。4日に放映された国営テレビなどのインタビューで語った。米国が検討する対シリア軍事介入に欧州諸国からも否定的な見解が出ている中、プーチン政権は同首脳会合をシリア問題での主導権奪取につなげたい考えだ。
プーチン氏は、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとの確たる証拠があれば、米国などの軍事行動を容認することも「排除しない」と発言。ただし、国連安全保障理事会の承認を得ない軍事介入は「侵略にほかならない」と米国を強く牽(けん)制(せい)した。
また、首脳会合でシリア問題を取り上げるのに加え、オバマ米大統領と個別会談を行いたいと述べ、オバマ氏に真っ向から対(たい)峙(じ)する構えを見せた。
プーチン氏が自信に満ちた言動を見せている背景には、アサド政権擁護を猛批判され、孤立を深めた6月の主要8カ国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)とは状況が異なることがある。英国が下院の議決で軍事介入への不参加を決めたほか、ドイツ、イタリア、カナダといった国々も安保理回避の武力行動には参加しない姿勢だ。
インタビューでプーチン氏は「われわれはシリア政府ではなく、国際法の規範や原則、現代の世界秩序を擁護しているのだ」と主張しており、こうした論理で一気に対米攻勢をかけるとみられる。他方、米国が介入に踏み切った場合には、凍結しているロシア製高性能対空ミサイル「S300」の対シリア供与を検討するとも警告した。(産経)>
<[モスクワ 3日 ロイター]ロシアのサンクトペテルブルクでは5─6日に20カ国・地域(G20)首脳会議が行われる。G20では規模の大きさが、意見の一致を困難なものとしているが、今回はシリア情勢をめぐる主張の食い違いが会議の行方に影を落としている。
2日間の会議を控え、エコノミストの1人は「政策協調がほとんどない。これほど悪い状況は経験したことがない」と述べた。
議長国ロシアのプーチン大統領との個別会談を既にキャンセルしているオバマ米大統領は、首脳会議自体への参加さえ取り止めかねない。
米大統領は対シリアに対する軍事行動に関して西側諸国の支持を集めるのに苦戦。米国が頼りにする英国でも、議会が先週、軍事介入についてノーを突き付けた。
プーチン大統領はG20の議題としてシリア問題を取り上げたい考えで、8月31日には「(G20は)武力行使を決定できるわけではなく、国連の安全保障理事会の代わりでもない。だが問題を協議するに適した場であり、活用したらどうだろうか」と述べていた。
そのうえで、「国際法の根幹でもある、国際的な安全保障の体制を再び崩すのが米国の関心事なのだろうか。またそれが米国の国際的な立場を強めるかというと、そうではない」と指摘していた。
シリアをめぐる問題は、首脳会議の合間に少なくともG20の一部の外相が協議する見通し。ただし、首脳会議の場で、公式な討議の議題となるかは定かではない。
<ドルの独占的地位>
昨年12月にロシアがG20の議長国となって以来、金融市場が乱高下を繰り返している背景には、準備通貨としてドルが独占的な地位を維持している状況がある。
今年初め、日本の安倍晋三首相は積極的な財政策・金融緩和策を打ち出し、自国通貨安を誘導するとして批判を浴びた。
米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が5月に量的緩和縮小の可能性に言及したことが、新興市場から資金引き揚げにつながり、特にインドなど対外赤字や財政赤字を計上している国々が影響をもろに受けることになった。
ロシアの首脳個人代表(シェルパ)を務めるクセニア・ユダエワ氏は記者への説明で、「米国が量的緩和策から手を引くことに伴う副作用について、重点的に討議が行われるだろう」と述べた。
インドが8月30日、新興国によるオフショア通貨市場への協調介入の可能性を示唆したが、他のBRICs諸国が応じる気配はない。
<達成可能な課題>
一方、多国籍企業による租税回避への対応策での合意など、達成可能な課題もある。
また、デリバティブ(金融派生商品)への新たな規制導入が各国首脳に提案されることになる。
G20の監督当局で構成する金融安定理事会(FSB)は、「影の銀行」(シャドーバンキング)への規制強化に関する一連の政策提言を公表。これ基づいてまとめられた新たな規制の枠組みが、首脳会議で承認される見通しだ。
影の銀行セクターはこの枠組みを2015年までに完全に順守することが求められることになる。(ロイター)>
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