■民主党内の反発に直面するオバマ大統領
オバマ大統領は、下院共和党議員が自身の政策を阻止していると批判することが多い。しかし、大統領は民主党内でも政策の一部に不満を抱く反対派に直面している。特に、シリアへの武力行使提案や社会保障制度改革、サマーズ氏をFRB次期議長に指名する意向などに、リベラル派が反対姿勢を示している。サマーズ氏はクリントン政権時代に財務長官を務め、金融規制を緩和したとして批判されていた。
オバマ大統領は、民主党議員から政策余地を制限されていることについて、共和党リーダーが保守系のティーパーティー(茶会党)に感じているようないら立ちを募らせているようだ。
政治評論家の一部は、オバマ大統領にとって、重要な政策を達成する期限が数週間後に迫っている時に民主党議員を統率する能力が弱まっていることは危険な兆しだと指摘している。
米議会は、10月1日の新年度の始まりまでに予算案を可決する必要があるほか、財務省は債務上限を10月半ばまでに引き上げる必要があるとの見通しを示している。
プリンストン大学の歴史学の教授、ショーン・ウィレンツ氏は「議会の民主党議員は勝手気ままに動いているようだ」と述べた。
オバマ大統領の問題のいくつかは自身の責任だと批判する人々もいる。大統領は決議が通過するかどうかの確信がないままシリアへの軍事攻撃問題で議会に決議を求め、一部議員を驚かせた。また、次期FRB議長候補として、左派にも右派にも異論の多いサマーズ氏の名前を挙げたことも、正式に指名したわけではないにもかかわらず、反対派から批判される材料となった。
ホワイトハウス当局者は、民主党内に対立があるとの見方を明確に否定し、予算など重要な問題で民主党は共和党以上に団結していると主張している。政権の高官らは、オバマ大統領と民主党議員が今秋の予算協議で意見が分かれるとは予想していないと述べている。
次期FRB議長人事に関しては、15日に候補辞退を申し出たサマーズ氏に代わり、ジャネット・イエレン副議長が最有力候補に浮上している。サマーズ氏が指名された場合、上院の支持が取り付けられないことは明白になっていた。サマーズ氏の辞退はオバマ大統領にとって大きな敗北となった。大統領はサマーズ氏を次期FRB議長に指名したわけではないが、検討するために政治的余地を与えるよう要請していた。
最近の展開をみれば、民主・共和両党の指導部は、一般議員から同意が得られるかどうかの確信がないまま予算協議を始めることになる模様だ。ジョン・ベイナー下院議長(共和、オハイオ州)は来年の予算戦略を巡り、共和党議員さえ束ねられずにいる。保守派議員が、医療保険改革法に資金拠出することになる歳出案の決議を望んでいないことがその大きな理由だ。
一方、オバマ大統領は15日に放映されたABCニュースのインタビューで、予算交渉の際に、社会保障とメディケア(高齢者向け公的医療保険)を巡って調整する意向があることを示唆した。他の項目について大統領に課題を突き付けている民主党のリベラル派は、富裕層に対する増税といったリベラル派の優先事項が抱き合わせとならない限り、こうした動きを拒否する公算が大きい。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫
13993 オバマ米大統領 民主党内での影響力に陰り 古澤襄

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