<9月半ばに東京・星陵会館で「現下の難局を乗り越えて~日中が信頼関係を乗り越えて」をテーマにした国際シンポジウムが開かれた。日中双方が尖閣諸島問題をめぐって、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を展開したのだが、その中で中国側が「ぜひ読んでほしい」と取り上げたのが、人民日報に掲載された王毅外相の対話解決を強調した論文だった。(フジサンケイビジネスアイ)
この国際シンポジウムは、日中関係学会(会長:宮本雄二元駐中国大使)が主催したもので、中国からは中日関係史学会の代表団(団長:王泰平元中国駐大阪・札幌総領事)8人が共催の形で参加した。日中両国の首脳対話が思うようにいかず、民間交流も多くが延期・中止となっている中で、日中関係者が膝を交えて議論し合う数少ない機会となった。
尖閣諸島の領有権をめぐっては日中間の主張が対立したままだったが、特に目立ったのは中国側が「和すれば共に利あり、争えば共に傷つく」として、現状の打開を訴えたことだった。
まず王泰平氏が取り上げたのが、7月30日に中国共産党の習近平総書記が海洋建設の推進について語った「主権属我、擱置争議、共同開発」(主権はわが国に属するが、争いを棚上げて、共同開発する)の12文字である。この方針が領有権紛争についての最新の方針との説明があった。
もう一つ、シンポジウムの総括を行った馮昭奎氏(中国社会科学院栄誉学部委員)が、「ぜひ読んでほしい」と取り上げたのが王毅外相の最近発表した論文だった。日本のメディアではどこも取り上げていないので、ネットで探してみると、確かに9月10日配信で「堅持正確義利観、積極発揮負責任大国作用」と題した論文があった。
王毅氏が外相に就任してからほぼ半年経つが、これまでは控えめな姿勢に終始してきた。とりわけ日中問題については、駐日大使などを歴任した日本通なだけに、かえって発言を控えてきた経緯がある。今回のようなまとまった論文は外相就任以来、初めてといえる。
この論文ではあえて尖閣諸島の言葉は使っていないが、それとはっきりと分かる形で「領土主権や海洋権益の争いは、対話でうまく解決していく。争いの拡大化、複雑化には反対する」と明確に述べている。
習近平総書記や王毅外相の対話姿勢がどこまで本気なのか、日本側もしっかりと見定め、行動に移す必要があろう。(拓殖大学国際学部教授・藤村幸義 産経)
杜父魚文庫
14080 中国・王毅外相、論文で「日中、対話で解決」を強調 古澤襄

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