14199 揺らぐTPP年内妥結シナリオ   古澤襄

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉は年内妥結をもっとも急いでいた米国のオバマ大統領が国内事情により欠席する。主役の不在によって年内妥結に向けたシナリオはにわかに不透明になった。
各国の利害が交錯するTPP交渉は、首脳会合の中で政治的な妥協をはかるしかない。その機会がオバマ大統領の不在で失われた形となった。交渉妥結をもっとも急いでいた米国にとって手痛い誤算であろう。
オバマ大統領を欠いた8日の首脳会合では、それでも「大筋合意」の宣言をする方向だといわれるが、年内妥結の道は険しい。
<【ヌサドゥア=本田誠】6日閉幕した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、オバマ米大統領の首脳会合欠席の衝撃が広がる中で、目標の年内妥結に向け意見集約を進めた。難航分野で新興国に一定の譲歩を検討するなど、協議に進展もみられたが、具体的な詰めの作業はこれからだ。首脳会合は“主役”となる米大統領の不在で、重要な政治判断の機会を逃した形となり、年内妥結に向けた道筋は険しい。
「年内の交渉妥結に向けて日本として引き続き精力的に交渉を進めていきたい」
甘利明TPP担当相は同日の会合後、記者団に対し年内妥結に向け、交渉を一段と加速する考えを強調した。
閣僚会合で最大の焦点となったのは、特許権や著作権など知的財産の保護強化▽国有企業の優遇措置の見直し▽環境基準の扱い-の3分野だ。交渉では米国と新興国が激しく対立し、協議が行き詰まっていた。
打開策として、知的財産分野の一部で、日米など先進国がマレーシア、ペルー、ベトナム、ブルネイの新興4カ国に一定の配慮をし、目標到達期間で先進国よりも長い猶予期間を認めるなどの案が浮上した。
経済協力開発機構(OECD)への加盟・非加盟で先進国と新興国とを分け、1人当たり国内総生産(GDP)が高いシンガポールは先進国に分類する方向で検討している。
こうした議論を踏まえ、8日の首脳会合では「大筋合意」を宣言する見通しだ。しかし、それでも年内妥結に向けた課題は山積している。
先進国による知財分野などの譲歩案も、詳細は固まっておらず、新興国の納得を得られない可能性がある。また、最難関の農産品や工業品の関税撤廃については、閣僚会合で個別品目にわたる詳細な協議が見送られ、首脳会合以降に持ち越された。
交渉参加国は11月末までに交渉官による作業部会や2国間協議を開き、残された課題の最終調整を行い、12月の閣僚会合で最終合意を得るシナリオだ。
しかし、交渉推進の要だったオバマ大統領の欠席により、首脳会合における重要な“政治的判断”がなされる機会は損なわれた。今回の首脳会合は年内に12カ国の首脳が集まる最後の機会だっただけに、年内妥結に向けたシナリオにも、影響がでる恐れがある。(産経)>
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