14223 中国の弱みは国際機関への提訴   古森義久

中国が領有権紛争で日本とフィリピンを同じ手口で威嚇している実態の報告です。フィリピンは国連海洋法裁判所に訴えました。
中国はその撤回を必死で求めています。中国の弱点はこのへんにもあるようです。領有権での侵略的な拡張に対し、第三者が入ってくることを最も嫌い、恐れるようなのです。
■標的は日本とフィリピン、中国のしたたかな嫌がらせ領有権主張を押し通すための「孤立化」戦術
習近平国家主席も10月上旬、東南アジアのインドネシアとマレーシアを訪問し、バリ島でのAPEC首脳会議に出席したが、フィリピンはあえて外す形となった。李克強首相も、ブルネイで開かれるASEAN・日中韓首脳会議などに出る途中、タイとベトナムを公式訪問するが、フィリピンは訪れない。
さらにフィリピン政府は、中国が8月末からスカボロー礁海域に建設基盤となる小型のコンクリート台を多数敷設し始めたと発表した。中国政府は否定したものの、フィリピン側は証拠だとする写真を多数、公開した。その結果、両国の緊迫はさらに高まった。
そんな情勢の中で、中国はこの9月、フィリピンのアキノ大統領の訪中を、事実上、直前に拒むという過激な手段に出た。9月上旬に南京で開催された第10回の「中国・ASEAN博覧会」に今回は「主賓国の代表」としてアキノ大統領が招かれることが内定していたにもかかわらず、中国は直前になってその 中止を求めたのだった。
フィリピン政府の主張によると、中国政府はアキノ大統領の訪中に対して、国際海洋法裁判所への裁定申請の訴えを取り下げることを前提条件として求めたという。訴えを撤回すれば、大統領の中国訪問を認める。撤回しなければ認めない。こんな単刀直入の威圧だったというのである。中国政府が領有権紛争に関して国際的な調停や裁定をどれだけ嫌うかの例証である。
この点、日本に対する中国のいまの態度も酷似している。日中首脳会談の開催には「日本側がまず尖閣諸島の領有権紛争の存在を認めよ」という前提条件を求めるというからだ。
一方、中国は同じ領有権紛争を抱えたベトナムに対しては最近は懐柔のような態度の軟化を見せ、ベトナムの国家主席を中国に招いた。東南アジアの他の諸国にもことさらソフトな姿勢を見せて、フィリピンだけとは、国家元首はおろか外相レベルでも接触を忌避する構えを示しているわけだ。
ASEAN首脳会議では南シナ海での領有権衝突に対する中国の一方的な軍事行動を規制するための「行動規範」の採択が最大の議題となった。
ASEANでは2002年にすでに中国を含めて一応の「行動規範」に合意したが、法的拘束力がないため、有名無実となっていた。その拘束力を持たせるための協議や交渉はその後延々と続いてきたものの、実を結ばなかった。
中国は今回はいかにもその種の新しい「行動規範」に同意するかもしれないような態度をちらつかせてきた。だが中国がフィリピンの国連機関への提訴に対して見せた激しい反発や忌避を見れば、ASEANという多国間機構への武力不行使の誓約に真剣に応じるはずがないことは明白である。(つづく)
杜父魚文庫

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