<カナダで開発が相次いでいるシェールガスの輸出について茂木経済産業大臣はカナダの天然資源相と声明をまとめ、両国で連携して日本向けの輸出に取り組んでいくことになりました。
茂木経済産業大臣は日本時間の12日にカナダでオリバー天然資源相と会談し、シェールガスの輸出に関する声明をまとめました。
この中で両国は、カナダ西部で計画が相次いでいるシェールガスの日本向けの輸出について連携を強化して取り組んでいくことを確認しました。
声明を受けて日本政府は、日本企業が参画するシェールガス田の開発に加えて、今後は船での輸送に欠かせないガスを液化してLNG=液化天然ガスにする施設や港湾など、日本への輸出に必要な施設にも資金支援を加速することにしています。
会談のあと、茂木大臣は記者会見し「シェールガスの輸出の高い潜在能力を持つカナダと、調達先を多角化して競争的な価格でLNG=液化天然ガスを調達したい日本は、補完的な関係にある。関係強化によって1日も早くカナダからLNGの輸入を実現していきたい」と述べ、カナダからの輸入に期待する考えを強調しました。
カナダ西部のLNG=液化天然ガスのプロジェクトで日本企業が持つ権益はあわせて年間860万トンと日本の輸入量の1割に相当します。
日本政府としては中東のカタールなどに依存するLNGの調達先を多様化し、輸入価格の低下につなげるためにも、アメリカに続いてカナダからの輸出を早期に実現したい考えです。
■.エネルギー供給を変える「シェールガス革命」
「シェールガス」は、地下数千メートルの深さにある固い岩石の層に閉じ込められている天然ガスです。以前から、ガスの存在は確認されていましたが回収することができず、開発は進んでいませんでした。
しかし、アメリカで高圧の水などを使ってシェールガスを取り出す技術が確立した2006年以降、生産が急速に拡大しました。
アメリカエネルギー情報局によりますと世界の埋蔵量はLNG=液化天然ガスに換算して1532億トンと試算されています。
シェールガスの生産は埋蔵量4位のアメリカと5位のカナダで始まっていて、このうち開発が進んでいるアメリカの生産量は2011年で1億6400万トン余りと日本の年間の輸入量の2倍近くになっています。
シェールガスの増産によってアメリカの天然ガスの価格は他国に比べて大幅に安くなりました。アメリカではシェールガスの開発計画が相次いでいて、2020年ごろには天然ガスの純輸出国になるとみられています。
「シェールガス」は埋蔵量トップの中国などでも開発が検討されていて、中東など限られた地域に頼ってきた世界のエネルギーの供給構造を大きく変えるとみられ「シェールガス革命」とも呼ばれています。
■コストに期待カナダ産シェールガス
アメリカは国内への供給を優先するため、シェールガスの輸出先をFTA=自由貿易協定の締結国以外には制限を設けています。
アメリカとFTAを結んでいない日本に輸出する場合は個別の計画ごとにアメリカのエネルギー省の承認が必要になっています。
一方、カナダからの輸出にはアメリカほど厳格な手続きは必要ありません。さらに、アメリカに比べて日本への輸送コストが安くなると見られます。
アメリカの輸出基地はメキシコ湾岸に計画されているためパナマ運河を経由して太平洋を通るのに対して、カナダは太平洋側に輸出基地を設けるためアメリカからの半分の10日程度で日本に輸送できる見通しだからです。
また、アメリカに比べて気温の低い地域でガスを液化するカナダでは、その分のコストも少なくすむ見通しです。
■課題は巨額な投資と環境影響
一方で、カナダからのシェールガスの輸出には、課題もあります。カナダはアメリカ以外に天然ガスを輸出したことがありません。アメリカにはパイプラインを使って輸出しています。
これに対して、日本に輸出する場合はLNGタンカーを使いますが、船での輸送に欠かせない天然ガスを液化する施設は新たに作ることになり、巨額の投資が必要になります。
また、開発が予定されている地域はそもそも人口が少ないうえ、計画が相次いでいるため労働力の確保も課題になっています。
さらに、採掘現場から太平洋沿岸に計画している輸出基地までのパイプラインはロッキー山脈を越えるため工事費がかさむことに加えて環境への影響も懸念されています。(NHK)>
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