知らなかった逸話が豊富。よく小林秀雄をよみこなして歴史とはおもいで、「小林秀雄はかく語りき」という文学論。
■廣木寧『小林秀雄と夏目漱石』(総和社)
霧島と阿蘇で開催された学生の理論合宿会は国民文化研究所が毎年夏、全国の学生、青年をあつめて研修する伝統ある合宿イベント。日本の歴史、文化を学び、日本の精神を体現する。往時は小田村寅二郎氏が主宰された。いまも場所は異なるが、連綿と続いている。
著者は学生だった。四十年以上は前の話だから当然だ。それこそ小林秀雄の話が聞けるというので、緊張している。ひとつも聞き逃すまいと身構えている。
霧島と阿蘇で行われた合宿に小林秀雄が講師としてやってきた。この二回の講演は新潮社からそのごカセットテープとなって販売されているから、あるいは聴かれた読者も多いだろう。
著者はまるで実況録音のように、そのときの緊張感、会場の雰囲気を描写しながら、小林の講演の意図を探ろうとする。小林は本居宣長をかたり、悠久の歴史をかたり、日本の文学を語った。
評者(宮崎)も、現場にはいなかったが、このテープを何回か聴いている。講演の妙手、ベテランという感じで、日本の桜はソメイヨシノではなく山桜花だと断定するあたり、強烈な記憶がまだ耳に残る。
小林本人とも二回ほど会ったことがあるが、晩年の小林は小柄で表情が豊かで穏和な老紳士だった。
さて本書は、若き日の廣木氏が、小林の講演を聴き、作品群を耽読し、自問自答を繰り返しながら、年月をかけて書き上げた小林秀雄論である。近代の日本の懊悩を背負った夏目漱石と対比的になり、あるいは正宗白鳥とか大岡昇平がでてくる。
小林秀雄は昭和二十一年に創刊された『近代文学』が主宰する座談会に出た、次の爆弾発言をしたことは人口に膾炙されている。
「僕は政治的に無智な一国民として(支那)事変に処した。黙って処した。それについて今は何の後悔もしていない。(中略)この大戦争は一部の人たちの無智と野心とから起こったか、それさえなければ起こらなかったか。どうも僕にはそんなおめでたい歴史観はもてないよ。僕は歴史の必然というものをもっと恐ろしいものと考えている。僕は無智だから反省などしない。利口な奴はたんと反省してみるがいいじゃないか」
一種挑発的言辞で左翼知識人に喧嘩を売っているようにも聞こえる。
これは大岡昇平によれば「物議を醸した台詞(せりふ)」として、いまも小林秀雄論にはかならず引用される。ところが埴谷雄高によれば、「小林さんは座談会で言ってなくてあとで書いたものなんだ。だいたい小林さんは座談会の原稿は全部書き直して、はじめの言葉はひとつのないくらいだよ」と昭和五十八年になって大岡との対談(「ふたつの同時代史」)で真相を明かしている。
ほかにも山のような逸話があり、たとえば豊田自動車に講演にいったおり、小林は「トヨタはいずれ世界一の会社になる」と予言した。白州次郎は「そんなことはあり得ない」と言った。
小林はオカルト現象、心霊にも凝っていたという。
江藤淳とは三島の死をめぐって激論があった。三島の死の意義をみとめず「単なる老衰」として冷淡な江藤に対して、小林秀雄は「きみは歴史というものを何とおもっているのか」と激怒したことも後々まで語り継がれた。江藤若き日の勇み足、晩年の江藤は鮮やかに日本回帰し、『南州残影』を書いた。日本の歴史にのめりこんだ。
小林はある時「歴史とは何か」と問われ、「歴史は思い出である」と名言を残した。
(読者の声)金浦空港から乗ったタクシー運転手のソウルに住む朝鮮族(国籍が中国で、吉林省あたりから出稼ぎにきた)にたいする反感が並大抵でありませんでした。
とにかく悪辣で女はみんな淫売、男は暴力団でカネ儲けに手段方法を選ばないと運転手。しかも自分は「朝鮮族だが中国人だ」と威張って、悪さをする。彼らが集団居住するソウルの郊外一画は警察も近寄らないほど治安が悪い。
現在、中国吉林省あたりから韓国に出稼ぎにきている中国籍の朝鮮族は約二〇万人ほどです。それ以外にも滞在期間をオーバして不法滞在しているものの数は当局でも把握できていません。
彼らは中国では少数民族だと差別されていますが、韓国に来ると自分たちは中国国籍だと居丈高になっています。
とにかく中国人は韓国人をなめており、黄海の漁労禁止海域に侵入して乱獲していて、取り締まる海洋警察に逆に暴行するなど事件が多発しています。
しかし日本にたいしてあれほど強硬姿勢の韓国政府はコト中国人にたいしては腫れ物扱いです。現在ソウルの西南部の工場地帯に彼らが密集していて、凶悪犯罪地帯になっています。
朴槿恵政権は反日親中政策を進めていますが、韓国内でそれを批判する声が底流になっています。いまのところ韓中貿易高は2000億ドル台で日本、米国との交易高合計を上回っており、親中派の鼻息が荒いといえますが、中国は遠からずして韓国と世界市場で競合します。
その場合、韓中関係がこじれるのは明らかです。朴槿恵政権は米中両国と二股外交の綱渡りをしていますが、きわめて危ないギャンブルなのです。(TW生、在ソウル)
(宮崎正弘のコメント)初耳でした。貴重な情報を有り難う御座いました。
杜父魚文庫
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