北朝鮮の金政権が崩壊する場合の多様な対応策についてです。日本としてはとくに拉致被害者である自国民の保護や救出をどうするのかが課題となるでしょう。
■北朝鮮の崩壊に備えよ、米国の研究機関が警報 米中が北朝鮮で全面戦闘の可能性も
【提案】
・韓国と米国の政府は、米韓を敵と断じる北朝鮮政府の長年のプロパガンダに洗脳された国民一般へ正しい情報を提供する。国民が統一の展望を受け入れやすいように再教育をする。
・米韓側は北朝鮮での人道的援助の供与、選別的な恩赦、財産権などについての一貫した政策を北朝鮮国民に敏速に提示する。
・米韓側は大量の人道的援助を北朝鮮全域に敏速かつ均等に与える。すべての介入は援助を伴うようにする。
・北朝鮮の政権崩壊後に北の内部で起きる軍事衝突は韓国や中国に波及する可能性が高い。そのため、米韓側はその北の内部での衝突の停戦を即時に実現させ、北の武装勢力との直接的な戦闘を極力避ける。
・米韓側は北朝鮮の治安当局とできるだけ速やかに折衝し、すべての政治犯を無事に解放することに努める。北の治安当局は、内戦のような混乱の中で政治犯を大量かつ一気に処刑してしまう危険もあるため、そうした惨事を避けることに全力を注ぐ。
以上がランド報告の枢要部分である。
■政権崩壊時に拉致被害者はどうなるのか
ここでまず重大な懸念材料となるのは、中国の軍事行動だろう。
同報告は、北朝鮮政権崩壊の場合に中国が人民解放軍を送って軍事介入することの公算が大きいとしている。中国としては、自国領内への大量の北朝鮮難民の流入、自国領隣接地域での米軍の軍事行動、北の大量破壊兵器の帰趨などへの懸念があるためだ。
その場合、米韓軍が中国軍との正面衝突を避けるために、政治や外交のあらゆる手段を講じるべきだと強調している。しかし同報告は同時に、北朝鮮を舞台とする米中両軍の全面戦闘も最悪のシナリオとして起こりうると述べていた。
北朝鮮政権の崩壊というのは、もちろん日本にとっても国家安全保障の基本を揺さぶる重大事件であり、同報告が特別の注意を向ける北朝鮮の政治犯の扱いに関連して、日本人拉致被害者への影響も当然気にかかるところである。
金政権の崩壊時に、日本人の拉致被害者はどうなるのか。政治犯の扱いをされていないことは確実だろうが、北の治安当局の監視下にあることは間違い ない。その治安当局が自分たちの政権が倒れるとなった際、拉致被害者をどう扱うのか。日本側としては危機管理のシミュレーションをも含めて、取り組んでお くべき課題だろう。
長い東西冷戦の期間中、ソ連の共産党政権が完全に崩壊してしまうとは誰も予測できなかった。だが現実にはそんな予想外の出来事が起きてしまった。北朝鮮の金独裁政権の命運についても、最も控えめに見ても予断は許されないのである。(終わり)
杜父魚文庫
14309 北朝鮮有事に日本人拉致被害者をどうするか 古森義久

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