■中銀がリスク警告 英フィナンシャル・タイムズ紙
<ドイツ連邦銀行(中央銀行)はベルリンをはじめとする大都市で集合住宅の価格が20%ほど割高になっていると警告し、欧州経済の中核国での不動産バブルが起こる事態により一層の懸念を示した。
この警告により、欧州中央銀行(ECB)の金融緩和策がドイツにとっては行き過ぎだとの懸念が強まりそうだ。ECBの政策金利は過去最低の0.5%となっている。
ベルリンではアパートが2010年以降25%超値上がりしている(2日)=ロイター
ドイツの状況は海外投資家が世界の不動産価格上昇をあおっている兆候ともいえる。国際的に資産の安全な運用先が不足し、債券や株式の利回りも低下しているためだ。
独連銀によると、ベルリン、ミュンヘン、ハンブルク、ケルン、フランクフルト、シュツットガルト、デュッセルドルフのドイツ7大都市では住宅の価値がそれほど上がっていないのに、アパートメントは急激な価格上昇に見舞われた。こうした都市の集合住宅は2010年から平均で25%超も値上がりした。
「米国や欧州の一部で不動産バブルがはじけたことで、長年落ち着いていたドイツの不動産市場が海外投資家をより強く引き付けるようになった」。独連銀は10月の月次報告書の中でこう指摘した。
ユーロ圏の景気低迷がもたらした金利低下で住宅ローンが利用しやすくなった結果、預金者は別の投資先を探すようになっていると独連銀はみている。
■香港、ロンドン、ニューヨーク…他都市でも住宅値上がり
香港やシンガポールなどのアジア都市は、海外マネーによる住宅市場への影響を抑えようと海外の買い手に新たな課税を始めた。英不動産大手ナイト・フランクのデータによると、香港では現在、高級住宅の価格が暴落前の高値を上回っているという。
高級不動産の価格が08年以前のピークを上回っているほかの都市といえばロンドンだ。中心部に新たに建てられた住宅の4分の3近くを海外勢が購入したことがこの夏、明らかになった。
米国では、ニューヨークやワシントン、ロサンゼルスなどの都市で高級住宅に対する国内外の投資家の需要が高まっており、業界関係者は価格上昇に拍車がかかるのを懸念している。
ドイツの不動産取引は賃貸中心で歴史的に低位安定していただけに、足元の動きは異例。住宅価格が約7年ぶりの低水準にある他のユーロ圏諸国と比べても対照的だ。
ドイツ連銀が住宅市場の過熱を抑えたいなら、ECBに利上げを促すか、銀行に住宅融資のための資本を積み増させるといったマクロプルーデンス政策をとらなければならない。(フィナンシャル・タイムズ)>
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