14521 「三中全会」で習近平から何が飛び出してくるか  宮崎正弘

■待ったなしの改革は農地、銀行、国有企業、そして金利自由化
中国の通貨供給がGDPの二倍強に達している。この異常事態は預金者、中間層までが銀行からカネをかりて、不動産に投資しているからだ。
そして誰も住んでいないマンション群が、たとえ鬼城(ゴーストタウン)化しようが、しまいが、そもそも居住する意思は最初からないのだ。恰もマカオの博打場のように値上がりをまって売り抜ける。人生を博打と考えている中国人多数は、そうした投機行為にいささかの躊躇いがない。

11月9日から北京で「三中全会」が開催される。
第十八期第三回中央委員会全体会議である(参加者は370名)。ここで重要な新路線が打ち出されるだろう、と予測するのは英誌『エコノミスト』(2013年11月2日号)だ。
なぜ「三中全会」なのか。
1978年、毛沢東の死から二年後にトウ小平主導の第三回中央委員全体会議は、『改革開放』が高らかに宣言された歴史的会合となった。
階級闘争より日々の生活向上である、とトウ小平は言った。ひとりあたりのGDPは200ドルから、いまや6000ドル弱へと飛躍を遂げた。
習近平路線の新機軸は、したがって、次の会議で出てくるだろうというのが、この仮説の前提である。
しかも習近平は外国からの賓客を前にして「次の三中全会は1978年いらいのヒストリカルな会議になるだろう」と発言しているらしい。
第一は金融改革に連結する国有企業の非効率、腐敗、無能経営の実態へ荒治療的なメスがどこまで入るかだろう。
国有企業の非効率部門の再編は遅々として進まず、銀行と癒着した不透明な融資が改善されない限り、不良債権の山は膨らむ一方である。たしかに93年の国有企業改革は、不採算企業を切り捨て、4000万人が失業した。
第二は農民が農地を所有する権利を認めるか、どうか。
農地を売却する権利は地方政府が持ち、過去の不動産開発は地方政府が勝手に農地をデベロッパーに売却し、農民には雀の涙の保証金を支払って、あげくに路頭に迷わせた。農地を失った農民が五千万、これが社会騒擾、社会騒乱の原因になりかねないし、げんに頻発する農民の暴動、都会へでての自爆テロも多くが絶望の果てに、深い怨念を爆発させる失業農民と言われる。
だが、農地売却により歳入をえてきた地方政府は財源を失うばかりか、利払いを含む償還時期を迎えており、不良債権の処理を農地改革が表裏の関係となって、この問題の解決をうんと長引かせるであろう。
第三は金融方面への大胆な改革が必要とされているが、とりわけ民間企業が銀行からの借り入れが容易になり、金利の自由化へと進めば、為替の変動相場制への移行も時間の問題となって、人民元のハードカレンシー入りが可能となる。
しかし金融が大胆に緩和されれば国有企業は深刻な経営危機を迎え、やがてそれらが民営化に踏み切らざるを得なくなれば、失うものが獲得できるものより大きいという反対派をおさえこめるか、どうか。
杜父魚文庫

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