14557 朴槿恵大統領の「漢江の奇跡」再現は掛け声倒れか   古澤襄

■韓国の輸出依存変わらず
<[ソウル 7日 ロイター]「漢江に第二の奇跡」を起こすと約束して2月に就任した韓国の朴槿恵大統領だが、9カ月後の現在もそれは実現していない。
漢江の奇跡とは、1970年代に朴大統領の父親の政権が主導した急速な産業化だ。アジア屈指の工業国である韓国は一見、さほど問題を抱えていないように見えるが、強力な内需型サービス産業を欠いたままでは長期的には成長の落ち込みに直面しかねない。
10月の韓国は自動車、スマートフォン、コンピューターチップなどの輸出が堅調で、ドル建ての輸出額が過去最高を記録した。経済全体を見ると、年初からの成長率は前年同期比1.9%となっている。
韓国は先進国の仲間入り前に成長が停滞する「中所得国の罠」から抜け出して久しいが、世界銀行のデータによると、国内総生産(GDP)に占めるサービス産業の比率は2008年の61%から11年には58%に縮小している。
これは先進国ドイツの71%よりも、発展途上の中所得国であるマレーシアの49%に近い。
朴大統領は明らかにこの問題を認識しているが、偏った経済を修正するのに必要な措置を実施しない限り、5年の任期の半ばでレームダック化した歴代大統領の轍を踏むことになりかねない。
これまでのところ、朴大統領が示した目に見える変化は、韓国を変革へと導く新たな省の設置だ。しかし批判派に言わせれば、この「未来創造科学省」は焦点を欠いている。同省の使命には29項目が盛り込まれているが、これまで何一つとして大きな変化を生み出していない。

サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)やLG電子(066570.KS: 株価, 企業情報, レポート)に部品を供給するバイアトロン・テクノロジーズ(141000.KQ: 株価, ニュース, レポート)を創設したKim Hyoung-June最高経営責任者(CEO)は「朴政権は『創造的経済』をうたうプロジェクトを数多く案出したようだが、わが社の事業に役立った感じがするものは皆無だ」と話す。
韓国にはバイアトロンのような中小企業が300万社以上あるが、中小企業局の最新調査によると、このうち約70%は現在の市場環境は投資を正当化しないと答えている。
政策当局者は警戒感を示しながらも、数十年間にわたる工業部門と輸出による経済支配構造を改革する措置をほとんど講じていない。
韓国銀行(中央銀行)の金仲秀総裁は「(韓国国民は)実際には寒さを感じているのに、温かい場所に座っているかのごとく告げられ、首をかしげている」と述べ、見出しに表れる強い経済成長と、消費者や国内経済の実感にかい離があることを指摘した。
1970年代に急成長して主要な輸出企業となった韓国の財閥は多くの雇用を提供する一方で、コスト削減のために大勢の一時雇用者に頼ってもいる。
現代自動車(005380.KS: 株価, 企業情報, レポート)の場合、国内工場に5700人の契約労働者を抱えており、これはブルーカラー労働者3万5500人の16%を占める。同社のデータによると、彼らは正社員と同じ自動車の組み立てに携わりながら、正社員の75%相当の給与しか受け取っていない。
国際通貨基金(IMF)は1日、韓国は長期的に成長が鈍化するリスクがあると指摘。経済の不均衡を是正してサービス産業の自由化と改革を進めるため、通貨ウォンの上昇を許容すべきだと勧告した。
SK証券のエコノミスト、YumSang-hoon氏は「国民の賃金が上がれば支出も増える。不動産市場が持ち直せば借り入れも改善する。しかし方程式の両方が止まってしまい、結果としてサービス部門に悪影響が及んでいる」と述べた。
<家計の債務負担>
経済協力開発機構(OECD)の最新データによると、韓国の家計債務の総可処分所得に対する比率は2012年に153.4%で、2008─09年の世界金融危機前の139%とOECD加盟国平均の121.3%を上回っている。
消費者は貯蓄の大半を不動産につぎ込み、多額の住宅ローンを抱えている。統計局の推計では、昨年は家計資産の75.1%が有形資産だった。
朴政権は債務免除措置により消費者の債務負担緩和を試みたが、今のところ大した進展は見られない。
財務相の政策顧問であるChoiSang-mok氏は「一般市民が実際の変化を感じるまでには通常、時間を要する。われわれは企業活性化のための規制改革を実施しており、ひとたび世界経済が持ち直せば変化をもたらすと期待している」と述べた。(ロイター・解説)>
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