■秘密法は警職法の二の舞になりかねない
首相・安倍晋三の祖父である岸信介が国会に提出した警察官職務遂行法案(警職法)が、梶山季之のまき散らした“虚報”で廃案に追い込まれたのは知る人ぞ知る史実だ。いま一部マスコミによるその“虚報”合戦が佳境に達している。デパートやホテルどころではない“虚偽表示”のオンパレードだ。
共産党はしめたとばかりにこれを活用、民主党など野党も踊らされ、与党側がたじたじになっている。問題の本質をつかんでいない担当相・森雅子はうろたえた答弁ばかり繰り返し、暗愚の見本小池百合子が首相動静にまで難癖をつけて“敵”を多くしてしまっている。態勢を立て直さないと法案の成立がおぼつかなくなる。
そうなればせっかく成立へと動いている国家安全保障会議設置法案(NSC法案)が片肺状態となり、集団的自衛権容認に向けての安倍の国際公約も崩れかねない。
半世紀マスコミに籍を置いてその動向をウオッチしてきたが、そのマスコミがこれほど悪質な風評源化するとは思ってもいなかった。
10月28日に「米国の情報を守るために日本国民を罪に問う」などと書いた朝日の風評源化に警鐘を鳴らしたが、これがきっかけとなって新聞やテレビに“虚報とねつ造”の連鎖が生じている。冒頭述べた警職法のケースとそっくりだ。
警職法は58年に岸内閣が提出したものだが、梶山が匿名で週刊誌「明星」に書いた記事がきっかけでつぶれた。
梶山が書いた「また怖くなる警察官ーデートも出来なくなる」が一人歩きして、当時の社会党委員長鈴木茂三郎が国会で「これが成立したらデートも出来なくなる」などと発言して感情的な反対論を煽り、廃案に追い込んだのは有名だ。当時自民党幹事長だった田中角栄が明星編集部に抗議に行ったほどであったが、完敗した。
今回も、もっともひどい例として挙げると、一番道民に信頼されている北海道新聞のコラムだ。
防衛省が沖縄県名護市の辺野古の海岸にウミガメが上陸した形跡やジュゴン生息の形跡を調査で確認していながら、公表を控えていたことと無理矢理関連づけて「特定秘密保護法案なるものが、もしも成立すれば、ジュゴンの“お食事”もウミガメの“お産”も、国家機密として闇に葬られかねない」とやったのだ。
読者は法案の詳細までは知らないから、「国家機密ではたいへんだ」とばかりに反対に回る。朝日が「サラリーマンが飲み屋での話で逮捕される」とねつ造話を報じたのと同じ“手法”による風評伝達だ。
さすがにネットでは「こんな落書きを金とって売ってるんか、北海道新聞は」とか「北海道新聞の読者層は、その程度の知能レベルということ?」といった批判が続出している。いまやネットがマスコミを戒めてバランスを取るという状況となった。
北海道の「常識的」な一般紙ですらこの調子だから民放に至ってははちゃめちゃの風評源化している。その筆頭が田原総一郎だ。「国会議員が法案がおかしいと反対すると懲役5年」「オフレコで聞いた話を『総務省筋によると』と書くと共謀罪」と言いたい放題。
愚昧にも自分が多くの首相を退陣に追い込んだと思い込んでいる田原は「総理を辞めさせると教唆扇動でつかまる」とも言いふらす。
この程度のキャスターたちが集まって11日には反対声明を発表したが、衆愚を作る衆愚の情報源が何をやっても問題はない。無視すればいい。しかし共産党など政党がこれを活用しようとしているから事態は深刻だ。
共産党機関誌・赤旗はこうした風潮を嬉々としてコラムで取り上げた。「懲りないというべきか、岸首相の孫の安倍首相が持ち出してきた秘密保護法案にも反対世論が高まっています。週刊『女性自身』は『放射線量をママ友と調べただけで懲役!?』と書いた」と“虚偽表示”を奨励。
「『政府保護法案』であり『国民監視法案』(琉球新報)など、的を射た新聞の批判も」と、風評報道をおだて上げる始末。
「秘密保護法をめぐり緊迫した国会。阻止するためには、危険極まりない内容を急速に知らせ広げることがカギです」と扇動して、「本紙の特集記事をもとにしたパンフレット『国民の目・耳・口ふさぐ これが秘密保護法』も発行されました」とプロパガンダに余念がない。
まさにキャッチフレーズで「虚偽表示を急速に広げる」作戦に出て、風評紙、風評テレビと「虚報の連鎖」を生じさせようとしているのだ。
朝日の世論調査で42%が反対と報じているが、散々煽ったうえに誘導的設問で行った調査なら当然この程度の数字は出る。むしろ賛成が30%も出たことが不思議なぐらいだ。NHKの調査は逆に法案が「必要だ」が25%、「必要でない」が16%である。安倍内閣の支持率は60%で2ポイント上がっている。
これに対してはなはだ頼りないのが政府・与党だ。森は問題の核心をつかんでいない答弁を繰り返し、報道機関への家宅捜査を否定したが、法相・谷垣禎一は家宅捜査に含みを持たせるなどちぐはぐさを浮き彫りにしている。
幹事長・石破茂は早くも修正論の妥協で野党を引き込もうと懸命だが、野党はそっぽを向いている。自民党特命副幹事長の中谷元がもっぱらテレビに露出している。その発言は聞く人が聞けばもっともな内容であるが、説得力が足りない。紳士的すぎるのだ。
相手は風評源であり、デタラメな主張で国民をだまそうとしている言いっ放しの確信犯だ。これを切り崩すには機知と知略に富んだ「ワンフレーズ」が肝心なのだが、それに全く欠けている。それが出来るのは石破か、副総裁・高村正彦だが、なぜかおとなしい。
高村は全く秘密法案で目立つ発言をしていない。なぜか官邸の意気込みばかりが目立ち、党はクールで、ここでも“官高党低”が目立つ。
今まさに「目には目を歯には歯を」の態勢を作らなければ、野党と一部マスコミに蹂躙(じゅうりん)されたままとなる。(頂門の一針)
杜父魚文庫
コメント
田原総一朗は自分を老人と思っていないだろうが、かつて自分自身が批判した老害そのものである。オツムの「切れ」が悪くなっているのを、小便の「切れ」ほどに自覚がない。総理の首を獲ったと、おこがましくて言えないのが普通である。粗相しないために、すでにオツムにオムツをしているのなら納得出来る。