14601 ロイター分析 薄氏支持の「中国至憲党」   古澤襄

■権利など求める市民の増加反映
<[北京 12日 ロイター]失脚した薄熙来・元重慶市共産党委員会書記を支持する中国の新政党「中国至憲党」は、中国共産党の統治に対する脅威になるとは見られていないが、権利や法治を訴える市民が増加していることを示す例となりそうだ。
薄元書記の著名な支持者らは至憲党から距離を置いており、薄元書記の政治的な復活を求める活動が高まる可能性は低い。
一方、既存の枠組みの中で政治や社会の改革を訴える「新公民運動」など、権利向上を公の場で求める中国人は増加しており、至憲党設立メンバーである王錚氏もその1人だ。
中国指導部は社会不安につながりかねない政府批判を抑え込んでいるものの、環境保護活動家で現在は自宅軟禁中の呉立紅氏は「われわれのような人間は増えている。われわれは指導部に圧力をかけ、権利のために立ち上がらなければならない」と指摘。「その時になって初めて中国は進歩できる」と述べた。
<左派のほとんどは新党を知らず>
薄元書記の失脚は左派(保守派)の怒りを招いている一方、元書記の著名な支持者らは、至憲党に参加しておらず、興味もほとんどないとしている。
薄元書記の裁判への抗議デモを呼び掛けたことを受けて8月に拘束された記者の宋陽標氏はロイターに対し、「新党について私に何かを言ってきた人は誰もいない。新党の機構や設立者については本当に何も知らない。私とは無関係だ」と指摘。「われわれ(薄元書記支持者)の大半は新党について知らないと思う」と述べた。
社会評論家の司馬南氏は新党を「茶番」と表現。「薄熙来が重慶で行ったことは全てが共産党のためであり、彼が別の党に参加することはないだろう」とした上で、「新党は悪ふざけだと思うし、その狙いや背後関係については何も知らない」と述べた。
薄元書記は新党の終身主席とされているが、同氏がそれを引き受けることができるのかどうかは不明だ。
■アナリストは、当局が新党の無視を決め込むと予想する
北京在住の政治評論家、陳子明氏は「共産党内に薄元書記の支持者が存在するのは確かだが、至憲党を支持すると発言する人間はほとんどいないだろう」と指摘。「共産党はこれら極左派をあまり懸念していない。彼らが自由民主主義を支持すれば、すぐに抑え込まれるだろう」と話す。
中国共産党は1949年の政権樹立以来、対抗する政党の設立を認めていない。特に共産党の指導部にいた薄元書記を終身主席に据えていることもあり、共産党は至憲党に厳しい対応をみせる可能性がある。
今のところ、中国政府が王氏に対し、何らかの直接的な行動をとっている様子は見られない。ただ、同氏の自宅は警察や私服の公安関係者による監視を受けているという。
同氏はロイターに対し、自身は反政府活動家ではなく、共産党の統治にも挑戦しないと指摘。「全国人民代表大会やさまざまな階級・階層の代表といった多くの重要な制度が憲法に盛り込まれているが、憲法に従っていない。これが私が強調したいことだ」と述べ、政府に対して集会や選挙の自由を求めたいとの考えを明らかにした。
犯罪組織撲滅キャンペーン「打黒」や毛沢東時代をほうふつとさせる政策で支持者を獲得した薄元書記は、汚職と職権乱用の罪で無期懲役が確定した。
至憲党は、9─12日に開かれている共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)を直前に控えた6日に結成され、薄元書記を「終身主席」としている。三中全会では経済改革が主要議題となり、政治改革は議題に上っていないとみられる。(ロイター)>
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