■石破も将来の新設に意欲
元首相・小泉純一郎の「原発即時ゼロ」発言がやぶ蛇となって、原発新設への政府・与党の思惑が次第に鮮明になって来ている。
再稼働もままならないのに新設をまともに唱えれば一見「愚論」とみられるが、そうではない。世界の潮流から見るとむしろ「先見の明」の類いとなる。なぜなら世界の原発需要はいまや200基に達しており、その潮流は「フクシマ」を乗り越えて「原発新設ブーム」の様相だ。
1基5000億円、総額100兆円の市場だ。放置すれば中国とロシアの粗悪な原発に席巻されて、それこそ地球規模で卵が崩れる「累卵の危機」に陥る構図だ。日本は原発「再稼働」を早期に実現し、内外の原発の新設・増設・リプレースに動かなければならない。それが歴史的必然であり、国家的な義務だ。
最初はもたもたと小泉発言に同調するようなそぶりを見せていた、自民党幹事長・石破茂だが、12日の小泉の記者会見後は吹っ切れたように豹変した。小泉の考え方が鮮明になって、その弱点が露呈したのを読み取ったかのように理路整然とした反論に出たのだ。
一部マスコミが小泉発言を「実は安倍を擁護するためのもの」などというとんちんかんな“邪推”をしているが、石破発言から見るとはっきりと小泉を「自民党に徒(あだ)なす者」と位置づけている。テレビなどで石破は小泉にゼロへの具体論が欠けている事について「具体論がなければ単なるスローガンに過ぎない」と決めつけた。
加えて「小泉さんは現職議員ではない。安全、安心が確認された原発は再稼働するという自民党の方針に責任を持つ人ではない」と言い切った。つまりそこいらの“おとっつあん”の無責任な床屋談義であると紳士的に言っているのだ。
「原発ゼロの場合、中東で何か起きれば国民の生活は奈落の底に落ちる」とも述べた。化石燃料に全面依存していたら第1次中東危機ななどとは比較にならないほどの危機が到来すると警鐘を鳴らしているのだが、もっともだ。電気がすべて止まり日本は地獄の様相を来す。
小泉の即時ゼロ論は原発反対派のスローガンである「トイレなきマンション論」が根底にあるが、これについても石破は「ゼロにしようがしまいが最終処分場はいずれにせよ作らなければならない。ゼロにすれば最終処分場が不要というのは明らかに間違っている」と断じた。
それはそうだ。原発保有国となった以上は最終処分場の確保はいずれにせよ避けて通れる問題ではない。すべての電力会社が利用する「超大型トイレ」をまず作るべきである。それを真っ先に避けて通ったのは、小泉自身である。
最終処分場を決める「原子力発電環境整備機構」は小泉内閣時代に動きだしたものであり、これをフルに動かして最終処分場を決めるのは小泉自身の仕事であったものを、消費税増税と同様に逃げてしまったのだ。郵政改革などよりよほど重要な課題を避けて通ったのが小泉であった。
その上で石破は冒頭述べた「先見の明」発言をした。原発新規増設に踏み込んだのだ。
「新規を認めるときはそれが本当に安全なのか、大震災の津波以上のものが発生してもきちんと止まり、きちんと冷やせ、きちんと放射能を発散しない技術が確認されたとするならば、再稼働であっても新規であっても基本的には理論が変わらない」と述べたのだ。
筆者もかねてから再稼働を認めるならば、それ以上に強化された原発新設が認められなければおかしいと主張してきたが、石破発言は全くこれと軌を一にするものである。
このように石破が原発ゼロへの反論どころか、原発新設論を発信し始めた背景には、国民の支持が根底にある。一部マスコミの喧伝に惑わされている側面があるが、国民の総選挙と参院選挙の2度にわたる選択が、1党だけ「原発ゼロ」に反対した自民党であったことを忘れてはならない。
紛れもない選挙公約で原発ゼロと対峙して勝ったのだ。加えて安倍の本心も、ほとぼりの冷めたころに原発新設という方向にある。安倍の口からは原発依存度を下げる旨の発言はあるが、「ゼロ」だけはない。
安倍は就任直後の12月30日、TBS番組で今後の原発政策をめぐり「新たにつくっていく原発は、事故を起こした東京電力福島第1原発とは全然違う。国民的理解を得ながら新規につくっていくということになる」と述べている。本心はここにあるのだ。
冒頭述べたように世界は原発新設ブームだ。新興国はもちろん北欧や東南アジア、中東、アフリカ諸国まで新設の動きは広がっている。30年新設を避けてきたイギリスまでがついに新設に踏み切った。
これを虎視眈々(たんたん)と狙うのがチェルノブイリの人的ミスで10万人もの死者を出したと言われるロシアと、新幹線墜落事故の中国だ。抜け目なく中国はイギリスの原発建設に資本参加している。世界の潮流は、ハーメルンの笛吹き男のような扇動者小泉とは逆の方向に向かっているのだ。
その意味で安倍が自ら先頭に立って事故を乗り越えた日本製の原発売り込みに成功していることは、地球規模で言って正しい。
朝日新聞は安倍の原発輸出が世界に危険を振りまくと難癖をつけるが、もう少し世界のエネルギー情勢と科学的知見を学んだ方がいい。イデオロギーで新聞を作ってはいけない。(頂門の一針)
杜父魚文庫
14663 世界の一大潮流となった原発新設 杉浦正章

コメント
>世界の一大潮流となった原発新設
まだこんなウソをつくアホがいたとは。
世界の原発は2006年以降、原子炉数も減り、原発発電量も減っている、
少しばかり新設が進んだところで、老朽化やコスト悪化で廃止になる原発の方が遥かに多い。
世界の原発発電量、ピーク越えか 減少の流れ強く 2012/6/19 23:20 日経新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1904K_Z10C12A6FF2000/
報告書によると、世界の原発の発電量は2000年以降、ほぼ横ばい傾向だったが、11年は日本やドイツ、英国で計13基が閉鎖、新規の運転開始は中国やインドなどの計7基にとどまった。年間発電量は、過去最大だった06年比で5%減の2兆5200億キロワット時だった。
現在、中国で26基、ロシア11基、インド7基など世界で62基の建設が進んでいるが、運転開始予定日が具体的に設定されたのは15基だけ。大幅に計画が遅れているものもあり、建設に時間がかかる新規原発が急増するとは考えにくい。
一方、福島事故後にドイツやイタリア、ベルギー、スイスは脱原発を決定。77%の電力を原子力に頼るフランスでも、オランド大統領は依存度を25年までに50%に下げる方針を示している。
運転開始から30年以上になる原発は180基近くに達し、老朽化で廃炉になる原発が増えるとしている。
報告書をまとめたマシュー・ローニー研究員は「何基の原発が40年以上の運転を認められるかなど不確定要因はあるが、新規建設のペースを考えると、長期的に原発の数や発電量が減少傾向にあるのは間違いない」と話している。
世界の原発発電量、12年6.8%減 2013.7.12 産経新聞
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/130712/cpc1307120503000-n1.htm
2012年に世界の原発が発電した電力量は2兆3460億キロワット時で前年比6.8%の減少10+ 件だったとフランスや英国、日本の国際調査チームが11日、発表した。世界の原子力発電の現状に関する報告書で明らかにした。
発電量の減少は3年連続で、ピークの06年比では11.8%減少。総発電量に占める比率も過去最低の10%にとどまった。
調査チームの一人、細川弘明・京都精華大教授は
「世界の原子力産業は下り坂にあり、
インドと中国では原発発電量を再生可能エネルギー発電量が上回るなど
再生可能エネルギーの優位さが目立っている」と話した。
発電量減少10+ 件分のほぼ4分の3が日本で、東京電力福島第1原発事故後に国内の原発が次々と停止した影響。12年の原発発電量トップ5の米、仏、独、韓国、ロシアも前年から減少した。
13年7月1日現在の原発発電容量は日本の50基を含めて427基、3億6400万キロワットだが、ドイツでの脱原発の動きや日本でも廃炉が進む可能性があり、発電容量の減少が予想される。