■人民解放軍とは見せかけだけの張り子の虎にすぎない。度肝を抜かれる軍の腐敗、真実は伏せられ国家機密扱いである。
<陳破空『赤い中国消滅 ―張子の虎の内幕』(扶桑社新書)>
中国の内側で実際に起きている腐敗、行政の機能不全ぶりの醜態。動かない、というより動けない人民解放軍。汚職の巣となってしまった中国のすべてのシステムがいずれ大音たてて崩壊するだろう。四川省地震のように。
しかし、そのあとを襲うのは民主化ではなく、軍のクーデターの可能性だろうと著者は示唆する。
本書の著者、陳破空氏は、元民主活動家、広州で胡耀邦の改革に共鳴し、民主、自由、人権、法治の旗を振った。1989年の天安門事件直後に逮捕・拘束され、獄中でつらい思いをした。やがて米国へ亡命し、辛酸をなめながら自活して、それでも中国の腐敗の告発を続ける。
つい先頃まで「中国は尖閣諸島は日本領であるとハッキリ認めていた。だが、いまになって尖閣諸島は中国のものだと主張し、軍艦と戦闘機を尖閣諸島周辺海域に繰り返し進入させ、日本を挑発している。中国の野心の大きさ、強硬な態度は世界を驚かせている。
『日本の経済支援なくして中国の現代化はあり得なかった』ことは、かつて中国共産党の指導者自身も認めていた事実である。それがいま、中国共産党は日本を敵となし、恩を仇で返している」と正論を主張するのである。
本書の特色は軍の腐敗に焦点を当てていることで、息子や娘を軍に就職させるために親が軍幹部に於ける賄賂の相場は二万元から五万元に跳ね上がり、軍は売春宿、武器密輸、武器転売などのサイドビジネスが盛ん。
あげくに海軍の軍艦が密輸をやっていると凄まじい実態を具体的に報告している。驚くばかり。この軍隊が戦争をやって、どうなるか。火を見るよりも明らかだろう。
習近平は「いつでも戦争できる準備をせよ」と呼号し、宴会と贅沢の禁止を命じた。楽しみを奪われた軍はそっぽを向いて「いつでも逃げ出す準備ができた」と嘯くのではないのか。
杜父魚文庫
14804 書評『赤い中国消滅 ―張子の虎の内幕』 宮崎正弘

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