<【ソウル聯合ニュース】北朝鮮で40年余り実力者として君臨した張成沢(チャン・ソンテク)元国防副委員長が、死刑でその生涯を閉じた。
故金正日(キム・ジョンイル)総書記の妹、金慶喜(キム・ギョンヒ)氏の夫である張氏は金正日政権から長きにわたり絶対的な権力を行使してきたとされ、それほどの大物の失脚と処刑を誰が主導したのかに関心が集まっている。
北朝鮮は「唯一支配体制」を貫いているため、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の裁可があったのは当然だろうが、張氏に対する膨大な罪名と緻密に進められた排除のプロセスは、権力システムをよく知る実力者が裏で糸を引いていたことを示している。
最高指導者の一族だった張氏の「国家転覆陰謀行為」を金第1書記に報告し、死刑に追い込むことができた人物はほとんどいないため、北朝鮮権力の中核をなす朝鮮人民軍総政治局と朝鮮労働党組織指導部が結託して仕組んだもの、との見方が出ている。
金正恩政権で金第1書記に次ぐ軍の実力者となった崔竜海(チェ・リョンヘ)軍総政治局長と、趙延俊(チョ・ヨンジュン)組織指導部第1副部長が張氏粛清の背後にいたとの分析だ。
2人はともに張氏の力で現在のポストに上り詰めたが、金第1書記の「1人支配体制」構築を名分に張氏粛清の先頭に立ったとみることができる。
まず目に付くのは崔総政治局長だ。崔氏は張氏と非常に親しく、張氏の力添えで金第1書記の右腕にまでのし上がったが、影響力が増すにつれ張氏とぶつかるようになった。
特に、昨年12月の長距離ロケット発射や今年の開城工業団地閉鎖などをめぐり張氏とのあつれきが深まり、張氏を目の上のこぶと感じていたようだ。こうした中、張氏の不正行為を誰よりもよく知る崔氏がひそかに張氏の排除を指揮したとみられている。
崔氏は1980年代から金日成(キム・イルソン)社会主義青年同盟委員長を務め、権力欲が強い人物として知られている。国家安保戦略研究所のコ・ヨンファン首席研究委員は「権力を得るためなら火水もいとわない崔氏が張氏粛清の最前線に立った可能性が非常に高い」としている。
崔氏が粛清の「企画者」だとすれば、その「演出者」は趙第1副部長と推定される。
趙氏はこれまでずっと組織指導部で働いてきた検閲の専門家だ。金正恩体制が発足した昨年4月の第4回党代表者会で、組織指導部ではただ一人政治局候補委員になり、政治的な影響力を増した。中央党内の党組織「本部党」の責任書記も兼ねており、あらゆる中央党幹部を統制するポストにいる。
原則主義者とされ、張氏が党行政部長として人民保安部(警察)や国家安全保衛部(秘密警察)などを総括し、組織指導部の地位を脅かすことに不満を覚え、排除に動いたとみられる。
北朝鮮事情に詳しい消息筋は「崔氏と趙氏が張氏の不正に関する資料を集めて金第1書記に報告し、金第1書記自ら叔父を死刑に処すよう仕向けたのだろう」と話している。崔氏と趙氏は今後の権力再編過程で、自らと親しい人物を要職に就かせると予想される。(聯合)>
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