■元米国防次官補ら提言 「南シナ海でも防空圏認めるな」
<筆者はウォレス・グレグソン元米国防次官補とジョアナ・テイラー元米国防長官室政策スタッフ。(米誌ナショナル・インタレストの許可で簡略版を転載)
中国は、「東シナ海防空識別圏」を新たに宣言することで2つの戦略的な手を打った。第1に米同盟国に直接挑戦したこと、第2に標準的な国際慣行とは相いれない一連のルールを意図的に設定したことだ。
米国は、アジア太平洋地域の同盟体制における北方の拠点を維持することを目指し、海洋(とその上空)の自由の保証人を自任するのであれば、協調し首尾一貫した戦略的な措置を自らも講じる必要がある。
当面の手段として、中国指導層に、新防空圏を存続させるなら日米同盟の能力を強化するほか選択肢はないと正式通告すべきだ。そのうえで宣告の裏付けとして、日米の空、海兵力で尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の合同哨戒を行わなければならない。2年に1度、20余のアジア・太平洋諸国が参加する2014年「リムパック(環太平洋合同演習)」への中国の招待も取り消すべきだ。
以上の短期的な措置は、以下に挙げるもっと長期の宣言的政策と行動で補強されなければならない。
■宣言的政策
1、公海上の自由の定義を強く唱えよ 中国は、最近の同国国防省の主張とは裏腹に、防空圏を(その上空を含む)領海のように扱う異なるルールを擁護している。それにより、中国は公海上で容認される行為の再定義を狙っている。公海上の自由は現在、輸送(と無害通航)を超え、中国がいずれにも異を唱える偵察飛行、海中調査、軍事演習・訓練を行う権利を含めて適用されている。
2、米国は領有権が争われる上空に設けた防空圏を一切認めないと表明する 先頃のバイデン米副大統領アジア訪問に同行した米高官は、米政府が「関係諸国への事前協議なしに」南シナ海で防空圏を宣言しないよう中国政府に求めた、と語ったと伝えられる。
論理の逆立ちだ。米国は中国の東シナ海防空圏を認めないなら、南シナ海での中国防空圏も認められないし認めてはならない。加えて東シナ、南シナ両海での中国防空圏は台湾と台湾海峡を取り囲み、地域をさらに不安定にする。
3、中国の台頭は、日本との適切な同等の関係を受容せずして平和的にはなり得ない、と中国に対して明確にする 米国は米中関係の「より大きな構図」に関心を集中するあまり、地域レベルで泡立ち沸騰する緊張を見落としている。
米国は、地域の現状維持大国日本と勃興する地域大国中国との対立関係を慎重に管理する必要がある。中国は現在、地域での日本の主導的役割を容認し難い状況にある(日本が中国を含む地域の経済発展に大きく貢献したのに、である)。将来とも、日本が大国と位置付けられることすらよしとするか、疑わしい。
■行動
1、日米同盟の深化と能力増大への取り組みを強化する 地域安全保障態勢における日本の役割は転換点にある。日本が米国の完全な同盟相手にしてアジア太平洋地域の正規の一員となるには、同盟と国内安全保障上の取り組みに関しさまざまな基準を満たす必要がある。米国は、その取り組みに政治的、精神的支援を提供する必要がある。
2、東南アジアの連携諸国に海の領域について認識を促す 米国は東南アジアの同盟諸国や連携諸国とともに海の領域に関する共通認識を構築すべきだ。東南アジア諸国は共有する海、空域をめぐり相互の意思疎通をもっとよくすることで偶発事故を回避でき、全ての国が他の全ての国のプレゼンスに対する監視を許容することで、互いに良い振る舞いを促進できる。
3、米議会勧告通り米国と同盟の整合性ある軍事戦略を策定し発表する 米国は(アジアに安全保障の重心を移す)リバランス(再均衡)政策を取り、中国との政治・経済・安全保障関係も複雑化している。
そうした中で、中国への敵対的意図を否定し対立の激化や中国本土攻撃の回避を目指す一方、長期紛争では同盟・連携諸国に積極的かつ効果的な不退転の防衛を確約する国防戦略は(米国への)疑念を一掃し、米国の限界を測ろうとの(中国の)挑戦も抑止しよう。米国の意図を歪曲(わいきょく)し扇動する中国国内の特定利益集団も無力化するだろう。
■前進への道
中国は、一方的行為による現状変更の否定と自由で安全な公海の利用という、米政府が頻繁に表明する利益に直接挑戦する態度で、米国の忍耐の限界を試している。中国の行為は米国の同盟・連携諸国の利益への挑戦でもあり、各諸国の認識は死活的に重要だ。
米国は太平洋の大国だ。そのアジアでのプレゼンスはしかし、同盟・連携国の領土上の恒久的な基地や交代制の部隊、事前配備の装備により物理的に保証されている。このため米国は、同盟・連携国への確約を強化し、中国のさらなる一方的な不安定化行動への抑止力を強化するため、迅速かつ決然と、そして戦略的に行動する必要がある。(産経)>
杜父魚文庫
14925 尖閣周辺「日米合同で哨戒せよ」 古澤襄

コメント