■スウェーデンのグリペンNGに決定 36機購入
【ブラジリア 12月19日 AFP】ブラジルのセルソ・アモリン(Celso Amorim)国防相は18日、スウェーデン・サーブ(Saab)の戦闘機「グリペン(Gripen)NG」36機の購入を決定したと発表した。ブラジルの次期戦闘機については、スウェーデンのほか米仏のメーカーが数十億ドル(数千億円)規模の調達契約をめぐって競い合っていた。
ブラジルが候補として挙げていたのは、サーブのグリペンNGのほか、仏ダッソー(Dassault)のラファール(Rafale)、米ボーイング(Boeing)のF/A18。決定までには当初の予定より長い時間がかかっていた。
アモリン国防相によると、50億ドル(約5200億円)程度と言われていた調達価格は約45億ドル(約4700億円)。3社のうちサーブが最も安い価格を提示したという。
ブラジルの次期戦闘機は、検討が長引いた上、予算の制約で数度にわたり決定が延期されたこともあり10年近い時間がかかった。専門家らの間ではダッソーとボーイングの一騎打ちと見られていたことから、今回の決定は驚きをもって迎えられた。
■ブラジル防衛産業にも恩恵
アモリン国防相は、性能に加えて全体的なコストの安さと、全面的な技術移転が受けられることを理由にグリペンを選んだと説明した。
機体をブラジル国内で組み立て、自国の防衛産業振興につなげることがブラジル側の主な要求事項だった。アモリン国防相は次期戦闘機計画によってブラジル最大の航空機メーカーであるエンブラエル(Embraer)は大きな恩恵を得るだろうだろう、と語った。
アモリン国防相は、今後10~12か月かけてサーブと交渉して2014年末に契約を結び、最初の引き渡しはその4年後になるとの見通しを示した。
ブラジル空軍幹部が購入を支持していた最新型の多目的戦闘機であるグリペンは、空対空戦闘、空対地攻撃、偵察など幅広い任務をこなす能力があり、英国、南アフリカ、チェコ、タイ、ハンガリーの空軍も導入している。ブラジルのニュースサイトG1は、今後30年間にわたってグリペンはブラジル空軍の要求に応えられるという空軍報道官の発言を伝えた。
■米の情報収集活動、F/A18に逆風
ブラジルのジルマ・ルセフ(Dilma Rousseff)大統領は2011年、予算を理由に次期戦闘機の購入契約に関する決定を延期したが、空軍幹部らは、2005年にフランスから中古で購入した戦闘機「ミラージュ(Mirage)2000」12機を今月退役させることになっているため、次期戦闘機選定は緊急を要する問題だと主張していた。
先週のブラジル公式訪問時に自らラファールを売り込んだフランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領の努力は実らなかった。いまだにラファールの輸出実績のないダッソーにとっては厳しい結果となった。
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)前大統領は2009年、一時ラファールを選ぶ姿勢を示したが撤回し、決定を後継者のルセフ現大統領に委ねた。
ルセフ大統領は米ボーイングのF/A18に傾いていたが、米国がブラジルに秘密裏に情報収集活動を行っていたことが暴露されたことで、同型機の採用はなくなったとブラジルのメディアは報じている。(AFP)>
杜父魚文庫
14932 二転三転したブラジルの次期戦闘機選定 古澤襄

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